wikipediaを見ると、「第二次世界大戦中、ナチス・ドイツの迫害によりポーランド等欧州各地から逃れてきた難民たちの窮状に同情。1940年7月から8月にかけて、外務省からの訓令に反して、大量のビザ(通過査証)を発給し、およそ6,000人にのぼる避難民を救った」と書かれている杉原千畝だが、DHCテレビによる髙山正之・馬渕睦夫・大高未貴の鼎談を見るとどうやら作り話的な要素があるらしいので、関連する部分を文字起こししたい。
杉原千畝の美談
まずは、杉原千畝の美談がどういうものか概略を紹介したい。映画「スギハラチウネ」の解説によれば、「日本政府の命令に背いてナチスに迫害されたユダヤ難民に日本通過のビザを発給し、6000人の命を救った」とある。
書籍「杉原千畝物語―命のビザをありがとう (フォア文庫)」によれば、「千畝は迫害されたユダヤ人を救うため、外務省の命令にそむいて、自分の意志で日本通過のビザを発給しつづけ、六千人のユダヤ人の命を救ったのです。心の命令にしたがった外交官杉原千畝の生涯。愛と感動のノンフィクション。」となっている。著者は杉浦千畝の妻と長男だ。19件あるレビューのほとんどは「感動した」というものだが、1件だけ「反日NHKによるフィクション」と書いてある。
杉原千畝について、DHCテレビの関連部分の文字起こし
動画はこちら。杉浦千畝に関しては、41分ぐらいから話が始まる。
馬渕睦夫 例の杉原千畝事件ってのがあったでしょ?あの時私はイスラエルにいたんですね(※引用者注:馬渕氏は1991年から1995年まで在イスラエル日本大使館公使だった)。イスラエルにいましたからね、日本で突然、杉原千畝がわーわーって言われたから、一体なんぞやと全部調べ直した。
それでメディアで言われているのと全く事実は違うということを調べて、仕事でたまたま日本に帰ったらね、あるテレビ制作会社のディレクターが「ぜひお話しを伺いたい」と来たんですよ。それで「わかりました」って言ってね、この時とばかりに全部、「日本政府はビザは拒否していないと。出してもいいけれども、所持品を持っているとかね、最終行先地のビザがあるとかチェックして出すように。杉原は別に、その後も出世してるんですね。勲章まで貰っている。最後は外務省の人員整理で辞めたと。そういう話をね、とくとくとして「わかりました」ってそのディレクターが帰ったらね、できあがったメディアは例の日本政府がビザを出したらいけないっていうのにね、それに挑戦してビザを出した、英雄だなんてやってて。
居島一平 杉原さんが上司の意に逆らって、という物語にされているんですね。
馬渕 そうそう。みんなそれやってる。残念ながらいまだにそれはね、何度も名前だして悪いけど産経も改めてない。改めてないですよこれは。だけどあれはね、学校の副読本になっているけども全部誤りなの。でもそれは一切、日本の全部が、メディアがそういう風にね、「日本政府がNOと言ったのにそれに逆らった人道主義者だ」と報道して、フェイクの事実を作ってしまった。だからその時に私が思ったのは、まさに全てのメディアが同じ報道をするのはこれは危ない。
で、今は日本の全てのメディアが反トランプなんです。これも危ない。必ず裏があるんですね。だからね、我々はその一つね、フェイクニュース、フェイクニュースなんだけれども、ものによっては産経・読売と他と違うとかあるんです、それはいいんです、健全だからね。だけども、産経読売も含めて同じことを言うと、これは危ない。これは危険だということをあらためて感じましたね。
大高未貴 よっぽどその、杉原千畝に関してユダヤ人を日本人が救出したということに関して、例えば満州国でユダヤ人にゲートを開けた樋口さん(引用者注:樋口季一郎)とか安江さん(※引用者注:安江仙弘)、ゴールデンブックにも名前が載ってます。(引用者注:ゴールデンブックとは、ユダヤ人が大切にする聖典で、主にユダヤ民族出身の世界的人物名を記載したもの)
高山正之 東条英機も入れていいよね。
大高 そうですよね。そういったことがタブーならしくて、私もあるイスラエルの団体でユダヤ人救出についての講演を依頼されたことがあって、で、この樋口さん安江さんのことに触れたいって言った時に、「それはやめてくれ」って言われたことがあるんです。あくまでも、杉原千畝が日本の国策に反して日本のシンドラーとして頑張ったという美談で、そこから逸脱して欲しくないという強い圧力があり、底知れぬ不気味さと怖さを感じたんですね。ある団体のね。なんでそういうことするんでしょうかね?
高山 やっぱりね。もし、満州国で、オトポールだっけ?あそこから多く人を入れた、しかもその杉原千畝もそうだけど、目的地がきちんとアメリカなりなんなりあって、しかも無い人には上海の疎開地、あそこにも入れるというんで、結局全部便宜を図ってやって、あの時代に片方ではユダヤ人を救うんだとかいうのは、実際そんなことは口先では言ってるんだけど、実際に別にキリスト教徒でもないユダヤ教徒でもない日本が全て手筈をやって、満州のことをばらしたらね、認めたら、上海に入れてやったルート、それから上海からアメリカまで開いてやったルート、そういうのもどんどん出てきちゃうわけよ。そうするとあの時代、一番人道国家というのは日本だったんだって、しかもね、オトポールの事件では当時はもう絡んでるから、それがどうしてね、東京裁判で死刑になるのかっていう(引用者注:東条英機のことだと思われる)、またこれ問題になるわけで、もう杉原千畝だけでいいと、あと話は広げるなっていうのは、やっぱりさっき大使(※馬渕のこと)がおっしゃったようなさ、ある意向があってその意を踏み外させないし日本のジャーナリズムもその範囲で勝手にやんなさいと。
大高 でも日本側はそこをわかっておいて、しれーっとしてね、映画でも作ればいいと思いません?日本とユダヤの友好の物語でもなんでも。
居島 樋口季一郎さん主役にしてね。
大高 満州の国境で震えているユダヤ人の映像から入って、そこで関東軍の心の葛藤も入れて、それで感動的にゲートを開けて、そっからね上海からユダヤ人がどれだけアメリカ、新天地に渡っていって第二の人生を歩めたかって映画にするだけでもいいと思うんですけど。
居島 すごく絵になりますよね。
高山 葛藤は無かったと思うよね、だって瀋陽・奉天にはちゃんと交響楽団があってユダヤ人の人たちがたくさんやってたしね、そのうちそこに来たシロタなんとかっていうの(引用者注:ベアテ・シロタ・ゴードンの父のことか?)、わざわざ日本に招いて日本で居住させているわけだから、悪いものは何もないわけ。だけどあの時代にやっぱりほら、セントルイス号事件みたいにアメリカがユダヤ人の入国を拒否して、キューバにも拒否させて追い返して、それで強制収容所で死なせてしまったっていう事実が平行してあるんだから。対して日本では、いわゆる博愛というかね、人種差別の無い対応をしてきた。それをまさに映画化すればもうこれに勝るものはないやね。
大高 このせっかくの日本の美談を、中国がちゃっかり乗っ取って、中国が助けたみたいなね、フェイクニュース、嘘を、上海に記念館を作ってね(引用者注:上海犹太难民纪念馆Shanghai Jewish Refugees Museum)。もう黙ってたらなんでも日本の功績を自国の功績にすり替えてしまって。
高山 それは何、ユダヤ人は問題にしないの?ユダヤ人が日本に助けてもらったのに、あのブルーメンソール(引用者注:マイケル・ブルーメンソール)だっけ?彼は中国人と一緒にね、あの爆撃を受けたのを救助して歩いたんだって、日本が憎いみたいなことを言っているわけだよ。お前幻見てるのか?と。お前が来た時には既にもう中国にはね、日本を襲うような爆撃もないし日本はやってもいない。そういう事実があるだろと。あれをやっぱりね日本の新聞が書いてアメリカに「お前何でこんな嘘つくの?」っていうのをやればいいんだよね。
馬渕 それがね、私からも申し上げた、つまりフェイクニュース=フェイクヒストリーなんですね。だから今のようなフェイクヒストリーが横行しているわけです。日本が正しかったということはね、いわゆる「正しい歴史」は決して認められないということですね。それを遡ればね、今の人種問題ですけど、遡れば又あのウィルソン(引用者注:ウッドロウ・ウィルソン)に行くんですよ。ウィルソンは反対していたんですよ、あの国際連盟規約に人種平等の条項を入れよって日本が主張していたんです。
居島 パリ講和会議で。
馬渕 紆余曲折ありましたけどね。最終的に決をとったんです、採択を。そしたら過半数取ったんです。そしたらウィルソンが何か言っていると。何て言ったかというと「こんな重要な問題は全会一致が必要だ」って葬っちゃったんですよ。日本はだから、それ以来というかずっとですけどね、そういうその人道国家であってね、人種平等国家なんですよ。でもその日本を叩いて原爆で殺したから、そういう日本が人道国家であることがわかると具合が悪いんですよ。原爆を落とした人は戦犯ですからね。彼らこそ本当の意味での戦争犯罪を犯した人たちです。それをばらされると困るから、ずっと戦後70年、ずーっと日本は縛り付けておかなきゃならない、しかしね、私が思うのはそれも70年、80年が限度でね、永遠には嘘で縛り付けることはできないからね。だからやっぱりね、トランプが出てきたっていうのはね、日本にとっては僥倖なんです、これは。
居島 嘘の歴史も金属疲労をおこしますからね。
馬渕 だからリンカーンが言ったようにね、一人の人間を永遠に騙すことはできると。全ての人間を一時的に騙すことはできると。しかし全ての人間を永遠に騙すことはできないという有名な言葉がありますけどね。そうなんです。そういう今まで連合軍、アメリカが作り上げてきた嘘がね、嘘の歴史がいよいよばれ始めてきたと。そういう時期にあるんですね。ですからこそメディアはね、日本のメディアもしゃかりきになってそれを押し止めようとする。だから正しい歴史を取り戻そうとした安倍さんなり稲田さんなりを引きずり降ろそうとして、稲田さんは結局ね、引きずり降ろされたけれども、総理もそうでしょ、だからそれをやられたら困るんですよ。日本のメディアも困る。だって日本のメディアは嘘の歴史観の上に立ってるメディアですからね、残念ながら。
鼎談は続くがとりあえずここまで。
本当は杉原が特別だったのではなく、多数の日本人が人種平等を訴えたりユダヤ人救出に一役買っていたのに、それを杉原一人の功績にし、かつ日本政府を悪役にすることで戦前の日本を貶めようという意思が働いていることが読み取れるかと思う。
下記記事によれば、杉原は「日本の提示条件を満たさない避難民の日本行き乗船を、ウラジオストクで拒否せよ」と意見具申しており、日本国政府の方針に忠実に従っていた普通の外交官だったことが読み取れる。
参考記事:「杉原千畝」で日本人はダマされるな!
鼎談と似たような内容は、渡部昇一と馬渕睦夫の対談本「日本の敵 グローバリズムの正体」においても触れられているので紹介したい。
馬渕 私がユダヤ問題に興味を持ったきっかけの一つは、イスラエル在勤中に「杉原千畝の命のビザ」旋風が突然、日本とイスラエルに吹き荒れたことでした。1940年の第二次大戦中に、リトアニアのカウナス日本領事代理だった杉原氏が、①日本政府の命令に背いて日本通過ビザを発給したおかげで、六千人のユダヤ人が生き延びることができたが、②杉原氏は訓令違反によって終戦直後、外務省を解雇されたという物語です。しかし調べてみると、二点とも、事実に反していることがわかりました。
当時の日本外務省の杉原宛訓令電報では、日本通過ビザ発給には最終目的地の入国ビザを持っていること、および最終地までの旅行中の生活を支え得る資金を保持していることの二点が条件でした。これらは通過ビザの性格上よくある条件で、日本政府がビザ発給を拒否したわけではありません。また、杉原氏は戦後占領下で外交事務が激減したのに伴う人員整理の一環で1947年に退職し、退職金もその後の年金も支払われていますから、ビザ発給を理由にした解雇ではなかったのです。杉原氏はカウナス領事館閉鎖の後も順調に昇進し、1944年には日本政府から勲章(勲五等瑞宝章)まで授与されています。
ウソに基づく美談が作られ、マスコミがこぞって取り上げ、ドラマ化されたり、教科書の副読本になったりと、大フィーバーが起きました。杉原氏が、与えられた困難な状況の中で、日本政府の訓令に反しない範囲で人道的配慮を尽くしたことは賞賛されるべきですが、なぜ、日本政府がユダヤ人へのビザ発給を拒否したとの虚構が捏造されたのでしょうか。日本政府をどうしても反ユダヤの悪者に仕立て上げる筋書があったと勘ぐられても仕方がありません。
渡部 杉原千畝がサインしても、日本政府が許可しなければ外国人は入国できませんから、政府の基本政策に反していなかったのは明らかでしょう。
馬渕 実務の観点からすれば、本国政府の訓令に反してビザを発給することは無意味です。なぜなら、本国の命令に反して不正に発給されたビザを持っていても、政府は必ず入国を拒否するからです。外国人の入国を認めるか否かは国家の独占的権限であり、領事館など出先機関の裁量に任されているのではありません。杉原氏もこれを当然知っており、ビザを発給できたのは、日本政府がOKしたからです。
しかし真実を明らかにすると、杉原氏に与えられた「諸国民の中の正義の人」の顕彰に該当しなくなってしまう。この「正義の人」とは、自らの生命の危険を冒してユダヤ人の命を救った人に与えられる賞であり、イスラエルのホロコースト記念館(ヤドバッシュム)から、杉原旋風の前の1985年にすでに贈られていたものです。
コメント
結局は慰安婦問題と同じで、『日本政府が悪い』とする東京裁判史観・自虐史観による洗脳の一部なんですよね。
いわゆるグローバルメディアが手動して、今もまだフェイクニュースというかポスト・トゥルースを撒き散らしているようですし。
パプアニューギニアの日本軍問題といい、最近のロヒンギャ問題といいホント誰の利益になるんでしょうね。
>ななしさん
戦勝国側が、戦勝国にも悪い面があったといったん認めた上で未来志向の国際関係を築かないと事態は変わっていかない気がします。
そういう意味で、しがらみのないトランプさんに期待です。
東条英機がユダヤ人を助けていようが死刑であることには変わりないでしょう。
少しぐらいいいところを知られてもいいと思いますけどね。
>匿名さん
そうですね。
1938年、樋口季一郎中将は、独断でソ満国境のオトポールにたどり着いたユダヤ人をハルビンに受け入れています。
ドイツからこの件でクレームが入り、東条英機は樋口を呼び出しますが、樋口に「五族協和」「八紘一宇」の理念を説かれ、不問に付しました。