日本の財政赤字や少子化の原因は高齢人口が相対的に多すぎることに原因があると思われる。高齢者比率は高まっているから社会保障で赤字が出る。社会保障の赤字を抑えるために現役世代の払う保険料(年金、健康保険)は上がり、現役世代の手取り収入は減り、少子化をさらに悪化させる。
高齢の祖母に会った際に彼女が言っていたのは端的に「もう死にたい」ということだった。骨と皮だけでできているかのようにやせ細り、寝たきりの祖母だが、安楽死は許可されていないので、本人がどう言おうと家族や介護・医療業界の人たちの協力で彼女は生き続けている。
しかし、こんなことを言っては何だが、彼女の生命維持に費やされているリソースはリターンを生んでいない。特に財政的な意味で。
仮に日本で安楽死が許可されたらどの程度財政に貢献するのだろうか?
素人チックなやり方だが試算してみた。
安楽死導入が財政に与える影響の前提条件
1.安楽死にかかる費用は収益と相殺されゼロとする。
2.安楽死に応募する人は75歳以上の高齢者とする。
3.75歳以上の高齢者の一人あたり医療費の試算。
高齢者の一人あたり医療費は下図のようになっている。
元データ:http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/reform/wg1/280915/shiryou3-1-2.pdf
75-79歳の医療費は、77.7-13.8=63.9万円
80-84歳の医療費は、92.2-14.3=77.9万円
85-89歳の医療費は、102.6-14.5=88.1万円
90-94歳の医療費は、109.3-13.0=96.3万円
95-99歳の医療費は、116.8-12.6=104.2万円
100歳以上の医療費は、117.8-12.1=105.7万円
である。それぞれの階級の人口(平成28年10月1日基準)をかけ合わせて75歳以上の人口で割ると
(63.9万円×652万人+77.9万円×518万人+88.1万円×327万人+96.3万円×147万人+104.2万円×38万人+105.7万円×6万人)÷1690万人=76.6万円
4.75歳以上の高齢者の一人あたり年金費用の試算
こちらの記事によれば夫婦世帯の平均年金支給額(月あたり)は193,051円らしいので、一人あたり年金費用は、
193,051×12÷2≒116万円
独身世帯の平均年金支給額(月あたり)は111,375円らしいので、年間、約133万円。
中間をとって、一人あたりの年間年金費用は124万円とする。
5.75歳以上の高齢者の一人あたり介護費用の試算
年齢階級別の一人あたり介護費用は下図のようになっている。
元データ:http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/reform/wg1/280323/shiryou4.pdf
平成25年の数値で、
75-79歳の介護費用は17.1万円
80-84歳の介護費用は39.7万円
85-89歳の介護費用は79.9万円
90歳以上の介護費用は153.9万円
医療費と同じ様に年齢ごとの人口をかけて75歳以上の総人口数で割ると
(17.1万円×652万人+39.7万円×518万人+79.9万円×327万人+153.9万円×192万人)÷1690万人=52万円
6.75歳以上の一人あたり生活保護費の試算
生活保護費は総額で3.84兆円(平成29年度)。高齢者世帯が占める割合が51%。65歳以上人口のうち、75歳以上が占める割合は、1690万人÷3459万人=48.8%なので
3.84兆円×51%×48.8%÷1690万人=56,550円
※実際は高齢者の方が医療費扶助などを受けているはずなのでこの計算方法は正しくない。
安楽死が財政に与える影響の計算
75歳上の人にかかる年間の一人あたり社会保障費は、上記試算より
- 医療費 76.6万円
- 年金 124万円
- 介護費用 52万円
- 生活保護費用 5.6万円
合計 258.2万円とする。
仮に1万人が安楽死に応募してくれば258億円がその年だけで浮くことになる。実際にはその年の分だけでなく安楽死がなければ生存していた期間分だけ費用はかからないことになる。
75歳以上人口は1690万人くらいなので、仮に1%が安楽死を選べば、その年だけで16.9万人×258.2万円=4,363億円社会保障支出が減るはずである。
※老人に対して、積極的に安楽死を選んで欲しいと言っているわけではない。ただし、長年生きてきて、かつもう死にたいと思っている人を本人の意に反してまで生き永らえさせる必要はないというのが私の立場だ。
さらに国家予算が国家の収入を超えている現状を鑑みると、死にたい高齢者に予算を使うのはおかしいと思う。