大紀元は習近平がお好き!?

法輪功系の反共ニュースメディア大紀元。中国に対してしっかりと批判するメディアが少ない中、頼もしい反共メディアだがニュースの内容を見ると、中国共産党は批判しても習近平に対してはあまり批判していないことに気がつく。

大紀元日本語版のtwitterを見ても、江沢民をやり玉に挙げるものが多い。

保守系の日本人には、江沢民も習近平もとんでもない悪党に映るが、大紀元(少なくとも大紀元日本版)には習近平は善人あるいは中国改革の期待の星に映るようだ。以下、実際に大紀元の記事を紹介してみる。

赤字で書いた感想は、私が記事に抱いた感想である。

大紀元はどのように習近平を取り扱っているか?

2015年11月27日 【特別取材】習近平主席、民主化へ歩み=元北京大学助教授

記事の概要:元北京大学ジャーナリズム学部助教授・焦国標氏が大紀元の取材に答えて下記のように語った。習近平はフェイスブックを部分的に解禁する可能性がある、情報統制を緩和していく可能性がある、蔡英文と習近平が会談を行う可能性がある、党後継者選びに選挙が採用される可能性がある・・。

感想:この記事の観測に反して、中国では情報統制は強まり、台湾を武力併合することも否定しておらず、習近平は国家主席の任期を廃止し終身独裁者に成れるように法改正した。全く的外れの希望的観測記事。

2015年12月25日 中国共産党の解体に望み 「習近平はゴルバチョフになれる可能性あり」=欧州政治家

記事の概要:英国の議員とEUの前議長が、習近平に対して、共産党政治を終わらせ、民主主義を採用するべきと語った記事。

2016年1月29日 「 親愛なる習近平主席 」ニューヨーク・タイムズ紙面に法輪功の友 公開状

記事の概要:米国の非営利団体「法輪功の友」がニューヨーク・タイムズに習近平に対して公開質問状を掲載したことを紹介する記事。公開質問状では、習近平に対して、共産党の専制政治を終わらせ、独立した司法制度と民主主義を実現し、言論・出版・信教の自由を保証するよう要求している。

感想:習近平に期待するのは勝手だけどその後何かいいことあったの?

2016年5月3日 習近平主席「信仰自由」「法治を強化」法輪功政策が変わるシグナルか=宗教工作会議

記事の概要:中国で宗教工作会議が開かれ、習近平が宗教信仰の自由を強調し法治による宗教問題の解決を図る意向を示したと、習近平を褒め称え、習近平に期待を寄せた記事。同時に江沢民批判もかかしていない。

感想:それで中国国内で信仰の自由は進んだのでしょうか?記事内では、「江が最も恐れていることは習近平氏が法輪功弾圧政策をやめ、江とその関係者の反人類罪と集団大規模虐殺罪を清算すること。」という言葉が紹介されているが、江沢民はこの記事の時点で90歳くらいである。いまさら法輪功問題で告発されることにびびっていたりしないと思うのだが・・。

2016年11月5日 習近平「核心」の意味するところ=NYタイムズ

記事の概要:あくまでNYタイムズの記事の紹介だとことわりつつも、習近平が核心と位置付けられたことをポジティブに紹介している。いわく、核心の称号は様々な政策を遅延なく進めるためであり、毛や鄧とは違い、習近平が核心になれたのは様々な規則や制度を改訂して自分の権威を高めたからであり、なぜ今核心の称号を得たのかについては、中国が深刻な経済や外交問題に面しているからであり、中国のエリート階級内部には習が大きな権力を持ったことについて誰も異議をとなえていないのだそうだ。

感想:本当にNYタイムズにそういう記事が載ったのかどうかがまず疑問。習近平が核心を名乗ったことに対して、独裁化を意味するわけでもないし、権力欲があるからでもないし、皆が賛同しているなどとわざわざ書くのは提灯記事そのもの。朝日新聞レベルのお追従である。

2017年1月11日 習近平氏の政治改革と「中国の夢」(2)

記事の概要:習近平がこれまで行った改革のうち、監査機関の設立と軍改革を取りあげた記事。著者によれば、「監査機関の設立は中華文明の伝統に基づく」のだそうだ。

さらに、中国共産党の宣伝部門は江沢民派に乗っ取られているので、習近平が唱える「中国の夢」は強権的なものと海外に誤って宣伝されているが、実際は「中国伝統文化の夢」「中国憲政政治の夢」「中国の宗教の夢」であり、その内容は「中国の伝統文化を復興し、宗教や信仰の自由を保障し、中国共産党の政治体制を変えること」なのだそうだ。

感想:2017年時点でこんなことを書くのは終わっている。全く現実を見ていない。もしくは人民日報と同レベルのプロパガンダである。民主主義国家にはたいてい監査機関があり、中華文明の伝統云々は噴飯ものである。習近平が唱える中国の夢が強権的なものでないなら、なぜ世界各地で着々と軍隊が駐留できる拠点を増やしているのか?

2017年5月26日 台湾前総統、中国の習近平主席への印象を語る

記事の概要:台湾の前総統馬英九が習近平の印象について語った内容を紹介する記事。馬英九いわく「習主席は酒に強く、頭脳明晰、穏やかで、口が堅く、側近の参謀力が強い」。記事は馬と習近平が2015年に会談を行ったことを前向きに紹介している。

感想:習近平に対する提灯記事。台湾の独立派の意向は?

2018年3月7日 1強にこだわる習近平、胡錦涛の二の舞を危惧か

記事の概要:習近平が国家主席の任期撤廃を目論んでいることと、これまでの中国の国家主席の任期がどのように推移してきたかを紹介する記事。

感想:多くのメディアが習近平の国家主席任期撤廃を独裁化がさらに進むものだとして批判しているが、大紀元は批判していない。「一強となった習近平氏はより大きな責任を負うことになる。今後の政権運営でどのようにカジを切るかに注目したい。」と記事を締めくくっていることからも習近平政権の長期化を望ましいものとして捉えていることがわかる。

2018年4月10日 習近平氏、市場開放の継続を表明

記事の概要:習近平が講演で、自由貿易、市場の開放、関税の引き下げ、知的財産権保護の推進していくと述べたことを紹介した記事。

感想:習近平の発言をそのまま紹介しただけの記事で、過去に中国がいかに言動不一致だったかを追及しない点が変。

大紀元は「アベガー」の人たちと同じ様に「江沢民ガー」になっている

日本の左翼の中には、世の中の悪いことをすべて安倍総理に結びつける人たちがおり、「アベガー」などと揶揄されているが、大紀元は世界の悪をすべて江沢民に結びつけ、その他のことについては盲目になっている。

大紀元は、人類全体の利益や世界全体の平和よりも、江沢民を罰することに重きを置いているように見える。

大紀元は習近平の犬と呼ばれても仕方がない報道姿勢

習近平に対して期待するあまり目が曇っているのか、習近平と大紀元の間に何か協定があるのか、それとも大紀元自体が中国の工作機関なのかわからないが、習近平を中国民主化や信仰の自由の旗手のようにとらえるのは危険きわまりない

とにかく大紀元は習近平を批判しない。そして習近平を批判する人たち(石平氏など)を逆に批判する。是々非々ですらない。

大紀元にはいいニュースもたくさんあるけれど、こういう奇妙な点があることに注意して記事を読んでほしい。

コメント

  1. 竹槍 より:

    大紀元は宗教だから教祖の見解が全てなんです。おそらく上層部が習に好意的なのでしょう。信者たちは上層部の思想をなぞっているだけ。買収されたのか、夢想してるだけなのかはわかりませんが…。まぁ幸福実現党が大川隆法の私的政治団体なのと同じですよ。

  2. nextir35 より:

    >竹槍さん
    ニュースメディアに党派性があるのは嫌ですねぇ。習近平が宗教に優しいわけないのに・・