ふとまた聴きたくなってサザンオールスターズの昔のアルバムを買ってしまったが、やはり桑田佳祐の曲作りの才能には目を見張るものがある。
「人気者で行こう」(1984年)、「世に万葉の花が咲くなり」(1992年)あたりのサザンオールスターズは特に脂が乗っていたと思う。
しかし、サザンオールスターズが老齢のため活動をやめ、メンバーが死去した後に彼らの名声がどうなるかというと微妙だ。オールドメディアは「国民的歌手」のようにもてはやすかもしれないが、今の世情で桑田佳祐の書いた歌詞を読むとしんどいものがある。
桑田佳祐は、政治経済や個人の頑張りについてはシニカルな物言いをし、愛と性への撞着を自嘲的に歌い上げてきた。
桑田の皮肉っぽい歌詞の例を挙げてみる。
少年は大志を抱き方程式を解く
人並みに満たない者の存在は無い
成功に呑まれ
人は絶望を舐める栄光のバッジを胸に老人は説く
”有能な君の通夜には花を届けよう”
兵隊になって上官となって
ニッポンのヒールは戦闘機でLove And Peace!
(ニッポンのヒール)
友は政治と酒におぼれて声を枯らし
俺はしがらみ抱いてあこぎな搾取の中に
生まれたことを口惜んだ時にゃ
背広の中に金銭があふれてた
(真夜中のダンディー)
当時は、というか、1990年代くらいまでは桑田のようなスタンスが日本ではおしゃれというか粋だとされていた面がある。80年代、90年代は日本経済も今より相対的にずっと強かったし、ちゃらちゃらしていても経済的にどん詰まりまで行くようなことはなかった。また安全保障面でも強い危機は身近になかった。
しかし、世情が変わった2013年に桑田が書いた歌詞は、多くの人間をサザンオールスターズから離れて行かせたと思う。
都合のいい大義名分で
争いを仕掛けて
裸の王様が牛耳る世は…狂気
20世紀で懲りたはずでしょう?
燻る火種が燃え上がるだけ色んな事情があるけどさ
知ろうよ 互いのイイところ!!
(ピースとハイライト)
これを読むと、桑田は、日本が自国の利益のために侵略戦争をしかけたといういわゆる自虐史観に立っていることがわかるし、隣国とも話し合えばいい関係を築けるといまだに思っていることがわかる。90年代後半ならまだしも、2013年にこういった国家観・歴史観を披瀝するのは・・。
randomyoko氏はユーチューブ動画で桑田佳祐が酷い理由を12点指摘している。
いくつかピックアップすると、桑田佳祐のピースとハイライトの問題点は
- 歴史認識問題の意味がわかっていない
- 教育現場を知らない
- 外交の状況が把握出来ていない
- リテラシーが欠如している
- 日本人としての誇りがない
- 民主主義と独裁主義を勘違いしている
だとしている。私もほぼ同感だ。
桑田佳祐はすばらしい曲をたくさん書いたが、戦後レジームから脱出できなかったせいで、未来の名声を限定的なものにした。桑田が馬鹿にしていた長渕剛的な心情が、桑田の中に少しでも存在していれば、サザンオールスターズはもっと高く評価されただろう。