中年の子持ちの夫婦が何らかの事情でそれまで持っていた職と財産を失った場合に、再び経済的にやり直せるかどうか思案していたが、非常に難しいと感じた。
特別な職業能力があり、給料の比較的よい仕事に就けるのであればなんとかなるのかもしれないが、そうではない一般的な人にとって、中年から再スタートを切るのはとても難しい。
仕事はあっても給料が安い。特別な能力を持たない中年が中途から始められる仕事は、たいてい年収400万円未満である。年間給与が300万円台ならまだいいほうで、200万円台の求人が普通だ。
これで家賃を払い、生活をしていくのは難しい。子供が小さければ、共働きをするとしても、夫婦のどちらかは労働時間を制限することになり、さらに収入が限定されてしまう。
地方に住むのであれば、自動車の維持費がかかるし、ゼロから再スタートを切るのであれば、まず自動車を大人の人数分揃えなければならない。これだけで最低100万円はかかるだろう。
社会保障があるので、死ぬことはないが、浮かび上がるのは困難である。
しかし、こういった状況は何もゼロから再スタートをきる中年に限らず、大部分の人にとって一般的な状況なのかもしれない。若いうちから将来の高給を見据えて、コツコツ努力を重ねてきた人は大丈夫だろうが、ただ何となく大人になって流されるように生きてきた場合、生きていくだけでやっとの給料の仕事しか常に見つからないだろう。
多くの人間にとって、今の社会では「結婚して子供を作って、家を買う」という一般的とされる行為を成し遂げるのが難しい。これを全部できる人の方が少数派だ。
労働需給が逼迫したので、日本社会は、誰にでもできる仕事の給料が上がる機会に接していたのだが、外国人労働者を受け入れる事にしたので、単純労働の給料は低いままだろう。
政治家は外国人労働者受け入れを拡大するより、絞るべきだった。そうでないと、単純労働者の給料は上がらない。単純労働者の給料が低いと、結婚も子供をもうけることも難しい。
日本の政治家もトランプ大統領を見習って、日本に仕事を回帰させるよう働きかけるべきだ。製造業が帰ってくれば、もう少し状況は変わるはずだ。
グローバリゼーションが進むと99%の人間は貧しくなる
早く進むか、ゆっくり進むかの違いしかないのかもしれないが、グローバリゼーションが進むとほとんどの人は貧しくなる。
昔であれば、各町に八百屋や魚屋などの個人商店があった。それがスーパーに取って代わられ、さらにスーパー間で競争が起こり淘汰が進むと、各地方を代表するスーパーチェーンだけが残る。そしてさらに淘汰が進み、日本は数社の巨大スーパーチェーンに寡占されるようになる。
こういった現象があらゆる業界で起き、少数の大成功した企業の資本家と、その他大勢というふうに世界の人々は大別されていく。
グローバリゼーションが進むと、これまでよりも広い地域で寡占が起こる。町で起きていた寡占が市で起き、それが県レベルになり、地方レベルになり、国家レベルになる。やがては世界で数社だけが生き残り、その数社に業界が寡占されるようになる。
図にすると、昔の経済は下図のようだった。
各地方(都道府県や市町村)に建築業や小売業、飲食業、銀行などが存在し、小さな金持ちが各地に散在していた。
今の世界は単純化すると下図のようである。
各大陸(アジア、アメリカ、ユーラシア)に少数の成功した企業が存在し、それらの株主はとても裕福になっている。しかし、昔より多くの比率の人間が貧しい状態に均一化されている。
こういった流れを止めるには、政治が経済活動に介入しなければならないが、それもどこまで有効か不明だ。共産主義はうまくいかなかったが、将来の世界ではどのような社会経済制度が採用されるのだろう。