株式投資で巨額の負債をおった人が自己破産・個人再生を選択することを擁護したい

巨額の負債を個人がおってしまった場合、その負債を整理するには自己破産・個人再生などの手段がある。

信用取引で借金を背負った個人投資家が、自己破産等をすることに関して、様々な意見がある。私は、個人投資家がそれらの制度を利用することに賛成だ。その理由は後述するとして、まずは制度の概要を紹介したい。

自己破産制度の簡単な説明

自己破産をして、負債を免責できれば、負債はチャラになる(全額がチャラになるとは限らないようだが)。その代わり、99万円以下の銀行預金と20万円の現金、売価20万円未満の身の回りの物(家具、衣類など)を除いて、資産はすべて売却され負債の穴埋めにされる。不動産、自動車などだ。

自己破産をすると、資産が手元にほとんど残らない代わりに負債も清算され、ゼロからスタートすることができる。自己破産後、一定の期間はクレジットカードやローン、銀行借り入れは利用できない。また一定の期間、一部の職業に就けなくなる。

しかし、普通の会社員であれば、そのまま職業を持続できるし、配偶者の資産まで取られるわけではない。

数千万円クラスの巨額の負債をおった人間が、今後何十年もかけてそれを返済しようとするよりは、一度自己破産をしてやり直したほうが、経済的な復活は早いのではないだろうか。

個人再生制度の簡単な説明

個人再生制度では、負債を100万円~300万円に圧縮してもらって、それを3年で返せば、残りの負債はチャラになる(※ただし、債務者が圧縮された負債の金額以上の資産を保有していた場合は、最低限、その資産額までの金額を返済しなければならない)。

個人再生制度を利用するには、基本的に定期収入が必要だ。

自己破産とは違って、個人再生では不動産や自動車は保持したままでいられる。ただしクレカなどは一定の期間利用できなくなる。

株の信用取引で発生した負債でも、自己破産・個人再生はできるのか?

原則としてできる。個人再生は負債をおった理由を問わないので、株の信用取引が原因でも認められる。

自己破産も私が調べた限り、まず認められる。

責任を果たせという声、誰が迷惑を受けるのか

今回の一連の株式の暴落で、巨額の負債をおった投資家に対して、自己破産などは選択せずに絶対に借金をつめるように言い募るコメントが寄せられたりしている。

しかし、投資家が自己破産等をすることで損失を被るのは、証券会社であって、別に税金をつかって借金を穴埋めするわけではない。なので、一般の人間に迷惑をかけるわけではない。SBIホールディングスなどは最終利益で400億円以上の利益をあげており、たかが数千万円、数億円の貸倒損失が発生した所で、誤差の範囲だろう。

こういったリスクが発生することを見越した上で、ビジネスの制度設計をしているだろうし、信用取引の貸倒以上に、信用金利などで稼いでいるはずである。

だから道徳的な真面目さや、罪悪感から、自己破産等を選ばず、巨額の債務を証券会社に返そうとするのはいかがなものかと思われる。それよりも自分の人生を立て直し、自分や子供の将来に資するように生きた方がいいのではないか?

また、あなたが北尾さんだったらどう感じるだろうか?自分が北尾義孝氏になったつもりで考えてほしい。数千万円から数億円の借金を返済するために、投資家個人に、これからの一生を費やしてほしいと思うだろうか?企業があげている利益と比較すれば、貸倒れ損失は微々たるものなので「(自己破産しても)別にええがな」と思うのではないだろうか?

kitaoyoshitaka

※もちろん、この記事は、いざとなったら自己破産すればいいから信用2階建てで全力勝負しろ!と言っているわけではない。そのような投資は避けるべきだ。しかし、人は常に事前に失敗を予測できるとは限らない。

自己破産制度を使っても、個人投資家が巨額の負債をおってしまう最悪のパターン

自己破産を選択しても全ての負債が免責されるわけではない。たとえば税金は免責されない。

以下のような場合には、自己破産をしても巨額の債務が残ることになる。

2018年度 株式投資で莫大な利益をあげる。特定口座ではなく一般口座を利用しており、税金は後から払う。

2019年度 確定申告・納税前に株式投資で莫大な負債を背負う。証券会社に対する負債は免責されても、2018年度の所得に対して発生した所得税等の支払い義務は残る。

なので、こういったリスクを考えた場合、一般口座より特定口座の方が安心だと言える。

※自己破産・個人再生制度について、ざっくり調べた範囲で書いたが、間違えている部分があるかもしれないので、正確なことは専門家にお問い合わせください。