佐藤けんいち氏の反ユダヤ主義の説明は欺瞞だらけ・・

佐藤けんいちという方が、JBpressでいかに反ユダヤ主義が広まったかという内容の記事を書いている。

計り知れない罪、ロシアで生まれた史上最悪の陰謀論

世界を地獄に、荒唐無稽なデマはこうして広がった

この記事の骨子を要約すると下記のようになる。

  1. ユダヤ陰謀論による反ユダヤ主義は、ロシア革命の頃に始まった
  2. シオンの議定書が反ユダヤ主義の原因
  3. シオンの議定書は偽書
  4. ユダヤ人は今でもマイノリティ

しかし、これは反ユダヤ主義の起源や原因を非常に矮小化している。佐藤氏の主張のおかしな点を指摘してみたい。

1.反ユダヤ主義はロシア革命以前からあった

反ユダヤ主義はロシア革命以前からあった。いつが最初なのかわからないくらい昔からあった。

例えば、ヒレア・ベロックは著書「ユダヤ人」(1922年刊行)で次のように書いている。

私たちには、歴史の本で、私たちの人種とユダヤ人の関係についてありのままの事実を教える意思もない。このような関係を綴る物語があり、しかも歴史を動かす主要要因の中で有数なものであっても、そして歴史の背景に触れるときであっても、背景の目立たないところへ押し込んでしまうのだ。

歴史を教わるときに、生徒や学生がこれらの関係を目にするのは、わずか一、二行の記述だけである。教師は、エドワード一世の治世下のユダヤ人追放(※引用者注:1290年エドワード一世が、ユダヤ人のイングランドへの入国を禁止した。ユダヤ人が再入国を許されたのは、1657年)や、クロムウェル治世下でのユダヤ人の帰還について黙っているわけにはいかない。イングランド憲法の歴史を読めば、中世の王政下でユダヤ人が特別の経済的地位に就いていたことを耳にしないわけにはいかない(※引用者注:ユダヤ人だけが金貸しを行う特権を持っていたことを指すもの思われる)。このテーマは、2000年にもわたって果てしなく広がり、永続的で色褪せない特徴を備えている。その偉大なエピソードも、普遍的な影響も、そのすべてが意図的に抑圧されているのだ。

たとえば、ローマ帝国のことなら、細かな点までよく知っていると公言する人々でも、一体何人が、ユダヤ人保護とユダヤ人迫害の布告が代わる代わる大量に出されていることに気づいているだろうか。特に後のローマ帝国でのユダヤ人の経済的地位や、離散の特徴に気づいているだろうか。ましてや、ユダヤ人とヨーロッパ人の間で恐るべき大虐殺と、それに対抗する大虐殺が繰り広げられたことなどは、一度も書かれたことがないのである。

ハドリアヌス帝の治世下のキプロスやリビアの都市では、周辺の非ユダヤ人社会に反発してユダヤ人による排斥運動が起こっているが、それは今日、私たちの話題を独占している最近のロシアの瓦解よりもはるかに激しいものである。大虐殺は大規模だったし、その報復も大規模だった。ユダヤ人はキプロスだけでも100万人もの人々を殺害した。ローマ帝国はそれに応戦して鎮圧したわけだが、情け容赦のない戦争だった。

実例を挙げればきりがないだろう。重要なのは、平均的な教育を受けた人にとっては、それらのことが全く寝耳に水だという点である。あの私たちの文明の源泉であるローマ国家で、ユダヤ人はどのような構成分子だったのだろうか。ユダヤ人は、ローマによる激しい敵対行動とそれに対するユダヤ人自身の敵対行動の応酬をどのようにして切り抜けて生き残ったのか。ローマの神々を崇拝することでユダヤ人に期待された特権とは何だったのか。ユダヤ人によるローマ財政の操作とは、どのようなものだったのか。それが後世とどのように密接な相関関係にあるのか。何も語られないままなのである。平均的な教育を受け、ローマ史をかなり全般的に教わった人は、ユダヤ人は歴史物語の取るに足らない細部にすぎないという印象を抱いたまま、歴史の勉強を終えているのだ。

19世紀の歴史となると、その傾向はさらに極端になる。ユダヤ人の特質、秘密結社を通しての行動や諸外国でのさまざまな革命運動、金融を通しての急速な権力の獲得、政治的権力と社会的権力、何一つ教えられることはない。

これを読めば、ローマ帝国の時代から反ユダヤ主義は存在したことがわかるし、イギリスはユダヤ人を300年間以上追放していた。反ユダヤ主義は近代になって始まったものではないのである。

2.反ユダヤ主義の原因は、ユダヤ人自身にある

ヒレア・ベロックは著書「ユダヤ人」(1922年刊行)の中でユダヤ人とユダヤ人以外の間に摩擦が生じる原因として、秘密主義と優越感の誇示を挙げている。

それらも含めて、反ユダヤ主義が広まった原因には下記のようなものがあるだろう。

異教徒(ゴイム)への見下し。異教徒に対しては何をしてもいいという道徳観。ユダヤ教の聖典タルムードは、異教徒には秘匿されていたが、異教徒には何をしてもいいという内容が含まれていたとタルムードを読んだ人間は証言している。

参考記事:ユダヤ教の聖典タルムードはキリスト教徒についてどのように書いているか

またマルチン・ルターはタルムードは没収されるべきだと主張している。

参考記事:マルチン・ルターはユダヤ人をどのように評したか

商業的な支配、ビジネスにおけるえげつなさ

居住国への裏切り(イスラエル以外には忠誠心がない)

第一次世界大戦でドイツが敗れた理由として、ユダヤ人によってドイツが背後から刺されたという陰謀論が出回っていたと、佐藤けんいち氏は記事の中で触れているが、これは陰謀論ではなく事実だろう。

第二次大戦時、ユダヤ人はなぜドイツで迫害されたのかという記事に書いたが、ドイツ人が第一次世界大戦を戦っている時に、ユダヤ人商人は買い占めや値上げで不当に儲け、かつユダヤ人が経営していた新聞を使ってドイツ世論を左傾させ、戦争中にドイツ革命を成功させてしまった。その後の新政府においては、要職をユダヤ人が占めた。

だから、第一次世界大戦でドイツが負けたのはユダヤ人のせいという説明は間違いとは言い切れないし、第二次世界大戦においてドイツ人がユダヤ人への憎悪を煽るヒトラーに賛同したのは理解できる(ユダヤ人虐殺が正当化されるわけではないが)。

共産革命の実施

佐藤けんいち氏も書いている通り、ロシア革命はユダヤ人が主導して成功させた。富の私有を否定し、宗教も否定するような革命を主導したユダヤ人に当時の欧州人が警戒感を持ったのは当然だろう。

さらに言えば、フランス革命にもユダヤ人が多く関わっているし、近年ではユダヤ系アメリカ人ジョージ・ソロス氏は東欧で革命を仕掛けていた疑惑がある。

参考記事:なぜ「ユダヤ陰謀論者」の間でプーチンが人気なのか?

メディアと学界の支配

商業だけでなく、ユダヤ人はメディアと学界でも昔から要職を占めていた。それによって世論を操作し、歴史を操作し、学説を作り出してきた。ユダヤ人には頭脳優秀な人間が多いので学者が多いという側面もあるだろうが、先にヒレア・ベロックが歴史書においてユダヤ人が等閑視されていると書いているように、ユダヤ人は歴史教科書の書かれ方に容喙していた可能性が高い。

第二次世界大戦敗戦後のドイツで、ホロコーストの死者を上回る死者が、ユダヤ系アメリカ人の政策によって生じたが、これが歴史教科書に載ることはないだろう。

参考:ホロコーストの死者数を上回ったモーゲンソー・プラン

また帝政ロシアにおいてユダヤ人を虐殺するポグロムがあったことは指摘されても、ロシア革命後のソ連で、多くのロシア人が、主にユダヤ人が占めていた役人によって虐殺されたことは指摘されない。ノーベル文学賞を受賞したソルジェニーツィンの作品があまり注目されないのは、ユダヤ人にとって都合が悪い事柄が多く書かれているからではないか?

このようにヒレア・ベロックが本を書いた100年後の今も、ユダヤ人が為した悪行は、教科書には載らないのである。この不平等さが反ユダヤ主義を助長していると思われる。

メディア支配の方も現代でも続いている。昨今、フェイクニュースと批判されることが多いメインストリームメディアはほとんどユダヤ系が経営している。一方、保守系メディアのFOXは非ユダヤ人によって運営されている。

参考記事:米国メディア企業の要職に占めるユダヤ系の割合

儀式殺人に関する疑惑

ユダヤ人は儀式のために異教徒の子供を誘拐し、血を抜いて殺害していた疑惑が色濃くある。この噂は古代からある。さすがに古代から現代まで続くこの噂を、噂として切って捨てることはできない。wikipediaでは、古代から20世紀まで続く儀式殺人の疑惑を、全てユダヤ人に対するデマ・中傷であるかのように編集しているが、ただのデマが全世界で数千年にわたって継続するはずがない。

チャールズ・リンドバーグの息子は誘拐され殺されたが、ユダヤ人による儀式殺人によるものという説がある。

3.シオンの議定書は偽書とは言い切れないし、内容は現実と符号する

シオンの議定書は偽書だとされているが、誰かが完全に科学的に偽書だと証明することに成功したわけではない。「私が偽書を作成しました」と誰かが名乗りあげたわけでもない。また仮にシオンの議定書が偽書であったとしても、同様の内容の主張は他のユダヤ人からもなされている。

たとえば、1958年に発表されたユーリ・ロマノビッチ・ラリコフというユダヤ人が発表した「ユダヤ人への指令書」。この内容は、シオンの議定書とかなり似通っている。

参考記事:ユダヤ人への指令書(ユーリ・ロマノビッチ・ラリコフ)

シオンの議定書は、偽書であれ、そうでないのであれ、ユダヤ人の考え方、行動のエッセンスを表していた。だから当時の人たちはこれを信じたのである。佐藤氏が主張するような荒唐無稽な代物ではなく、読んだ人が「確かに」と納得する内容なのである。

そしてシオンの議定書に書かれた内容は、現在においてもユダヤ系の人物に実行されているのを観察することができる。

参考リンク:シオンの議定書

4.ユダヤ系は人数的にはマイノリティであっても、社会への影響度はマイノリティではない

佐藤けんいち氏はユダヤ人はマイノリティだと書いている。確かに人口数的にはマイノリティかもしれないが、世界で最も影響力が強い集団だろう。

ユダヤ系アメリカ人のブレジンスキーも、アメリカでWASPが没落し、ユダヤ系が力を持つようになってきたと著作に書いていた。

国家としても、イスラエルは悪く言う先進国はほぼない。

ユダヤ系は影響度では最強の部類である。

ユダヤ系に力が無いのであれば、マルコポーロ事件で雑誌が廃刊にならなかっただろうし、今でも花田紀凱氏はHANADAでユダヤ人に関する記事を掲載しただろう。しかし、実際には月刊HANADAも、保守系言論人もユダヤ人には沈黙している。

メディアは反ユダヤ主義のレッテルは貼るが、細部の議論には応じようとはしていないのでは?

メディアは頻繁に、反ユダヤ主義はよくないとか、反ユダヤ主義が増加したというニュースを流すが、反ユダヤ主義者と議論をし、果たして反ユダヤ主義者の主張が妥当なのかどうか議論しようとはしない。

それはおそらくガチンコで議論をすると、反ユダヤ主義者の言い分が勝ってしまう面があるからだろう。

反ユダヤ主義者の言い分が紹介されると、同調者が広まってしまうかもしれないからか、メディアは反ユダヤ主義者の言い分をきちんと紹介することもない。議論せずにただレッテルを貼るか、佐藤けんいち氏の記事のように子供だましの記事を掲載して、読者を騙すのである。

これでは反ユダヤ主義者は納得しないだろう。

私はユダヤ人が嫌いというわけではないが、ユダヤ人に対する言論のあり方、歴史書での扱いは不公平だと思うし、ユダヤ系が各界の要職を占めているのに言挙げされないことは変だと思う。歴史について再検討しようとする人たちが、歴史修正主義者として批判されるのは、主にユダヤ人が歴史をほじくり返されたくないから、批判をけしかけているのではないかとも思う。