シクリカル企業の景気下落局面での自社株買いは無意味では?

企業の株主還元・株価対策として行われる自社株買いだが、年々実行する企業が増えている。

ファイナンスの教科書には、自社株買いは企業が発する「株価が割安水準にある」というシグナルだと書かれていたりする。

しかし、景気変動の影響を定期的に受けるシクリカル(Cyclical)な業種の企業が、景気下落が始まったばかりのタイミングで自社株買いをするのはいかがなものなのだろうか?

株式市場において、景気の変動によって上昇したり下落したりする銘柄をシクリカル銘柄(景気敏感株)という。(野村證券HPより)

下図のように景気が変動するとして、

(画像引用元:マネー百科

現在の景気は、山から谷の間の後退期にあると思われるが、この局面で自社株買いをしても、結局は景気が谷に至るまでの間、株価は業績に応じて下がっていくはずである。

山から谷の間に行う自社株買いは、株価の下落を少し遅らせるだけで、中期的な株価への影響は少ない。

もしも自社株買いを行うのであれば、谷の近辺で株価が下がりきったところで行うべきではないか?そうであれば、ファイナンスの教科書が言うように、株価が割安状態にあるというシグナルになるし、企業も割安な価格で自社株買いを行うことができる。

景気変動の局面に関して、企業は違う意見を持っているのかもしれないし、単に総還元性向が決まっていて、その予算を消化するために自社株買いを現在の局面で行っているのかもしれないが、今、自社株買いを行うのは無意味である業種が多いと思う。

また、悪い業績を出した、悪い業績予測を出した場合にお茶を濁すために自社株買いを行う事が多いように思う。これも一時的なカンフル剤のようなもので、自社株買いの効果が切れたら株価は下がってしまい、中期的には意味がない。

ROEを上げたい、株主に還元したいというのなら、景気下落局面では、増配をしたほうがよいと思う。増配であれば、景気変動にかかわらず株を持ち続ける長期株主にも還元ができる。

コメント

  1. 謎man より:

    いつも記事を楽しませていただいております。私は株のブログを書くと、カッコつけたりしたくなるので、ブログの更新を辞め、のんびり運用しており、どうもその方が運用が良いようです。
    ずっとnextir35さんのブログで勉強していたので、色々ショックなこともありますが、nextir35さんの思想が好きで、ブログを引き続き拝読させていただいております。
    そこで、nextir35さんなら、中曽根康弘御大や前野徹氏の事も詳しいと思いますので、是非一度、nextir35さんがどのようにお考えなのか、お聞かせいただければ幸いです。
    日本の将来は危機的だと思っております。私は日本が好きで、日本の将来を非常に憂い、日本人として誇りを持って生涯を全うしたいと思っております。

  2. nextir35 より:

    >謎manさん
    コメントありがとうございます。あまり歴史や政治には詳しくなく(何か書いているとすれば、それは付け焼き刃状態で書いています)、前野徹氏の著作は読んだことがありません。
    中曽根康弘氏についてもよく知りませんが、渡部昇一氏は「裸の総理たち」で、「罪が功を上回る」と書いていますね。
    罪は、靖国神社の公式参拝で謝罪し、以後公式参拝できにくくした事や、東京裁判の判決を受諾したのではなく、東京裁判自体を受諾したという解釈を出したことなどでしょうか?
    功は、JRなどの民営化、米国との関係良化とあります。
    日本の将来は確かに危機的です。スパイ対策や外国人による土地買収、仮想敵国からの大量の移民なども含めて、広義の安全保障対策をしてほしいです。