アメリカ人の保守・極左の割合を明らかにした研究が出た

tarafuku10氏が「アメリカ人はポリティカル・コレクトネス文化を強く嫌悪している」というアトランティックに載った記事を翻訳している。

「アメリカ人はポリティカル・コレクトネス文化を強く嫌悪している」という米アトランティック誌の記事を訳してみた

この記事は、Hidden Tribes: A Study of America’s Polarized Landscapeというレポートを元に書かれたもので、レポートはアメリカ人を政治意識ごとに分類し、各グループが人口に対してどれくらいの割合を構成しているのか明らかにしている。

記事もレポートも面白い知見にあふれていてお勧めだ。

レポートの6ページ目には、政治意識ごとの分類とその割合が示されている。

アメリカ人を政治的意識で分類すると下記の割合になったそうだ。

  • Progressive Activists(進歩的活動家) 8%
  • Traditional Liberals(伝統的リベラル) 11%
  • Passive Liberals(受動的リベラル) 15%
  • Politically Disengaged(政治的無関心派)26%
  • Moderate(穏健派) 15%
  • Traditional Conservative(伝統的保守派) 19%
  • Devoted Conservative(ひたむきな保守派) 6%

日本の政治シーンの言葉に置き換えると、極左(進歩的活動家)が8%、右寄りの政治意識の持ち主が25%(伝統的保守派・ひたむきな保守派)、極右(ひたむきな保守派)が6%といったところだろうか。

各グループの特徴は下記のように紹介されている(レポートの7ページ。日本語訳は私がしているので間違っているかもしれない)。

  • Progressive Activists(進歩的活動家) とても若い、政治にとても熱心、無神論、地球市民感覚、怒っている。
  • Traditional Liberals(伝統的リベラル) 年配、引退している、譲歩することをいとわない、理性的、注意深い。
  • Passive Liberals(受動的リベラル) 不幸、不安、不信感、幻滅している。
  • Politically Disengaged(政治的無関心派)若い、低収入、不信感、疎外されている、愛国的、陰謀論を信じる。
  • Moderate(穏健派) 政治に熱心、市民意識を持つ、中道、悲観的、プロテスタント。
  • Traditional Conservative(伝統的保守派) 宗教を信じる、中流階級、愛国的、道徳的。
  • Devoted Conservative(ひたむきな保守派) 白人が多い、引退している、政治にとても熱心、非妥協的、愛国的。

記事が指摘する重要なポイントは、アメリカの言論界やニュースメディアでは、進歩的活動家が掲げる理念を支持する人の割合は、まるで国民の半数近くいるかのような前提であるけれども、そうした人々の割合はそこまで多くない。アメリカ人の8割がポリティカル・コレクトネス文化を嫌悪している。

また進歩的活動家の特徴として、高学歴・高収入である確率が高いことが挙げられている。日本でも、世田谷などの高収入地域に左翼が多いとされていることと符号している。

以下、レポートの面白かった部分を引用して紹介する。

非合法移民について

子供の時にアメリカにビザなしでやってきて、アメリカで育った人には市民権を与えるべきだと考える人の割合は64%で、イリーガルな形で移民として来た人は国外退去させるべきと考える人は36%。熱心な民主党支持者の99%が、市民権を与えるべきだと考えていて、熱心な共和党支持者の67%、ひたむきな保守派の72%が後者(国外退去)を支持している。

フェミニズムについて

現代のフェミニストは重要な問題のために戦っていると考える人の割合は54%、現代のフェミニストはただ男性を攻撃しているだけと考える人の割合は46%。進歩的活動家(極左)の96%、無神論者の76%は前者で、ひたむきな保守派(極右)の92%は後者。

トランプ支持・不支持

どちらかというと不支持が57%、どちらかというと支持が43%。進歩的活動家(極左)の99%が不支持。ひたむきな保守派(極右)の98%が支持。どちらの政党の支持者でもない人のうち、59%が不支持、41%が支持。

警察官の暴力性について

黒人に対して特に警察官はしばしば暴力的になると考える人の割合は51%。警察官はたいてい人種に対して公平だと考える人の割合は49%。黒人の91%は前者。

ひたむきな保守派(極右)の信念と進歩的活動家(極左)の信念の比較

濃い紫色が極右、赤い紫色が極左、点線はアメリカ人の平均。

男女は異なった役割を持つ。極右の91%がそう思う。極左の15%がそう思う。

子供は創造的(クリエィティブ)であることよりも行儀がよいこと(well-behaved)の方が重要だ。極右の86%がそう思う。極左の13%がそう思う。

アメリカ人であることを誇りに思う。極右の91%がそう思っている。極左の45%がそう思っている。

一生懸命に働くことは常に成功につながる。極右の92%がそう思う。極左の5%がそう思う。

政府は国民を経済的に守ることにもっと責任を持つべきだ。極右の3%がそう思う。極左の94%がそう思う。

男性はスタートの時点で既に有利になっている。極右の18%がそう思う。極左の91%がそう思う。

人生の成功・不成功はコントロールできない。極右の2%がそう思う。極左の86%がそう思う。

自国の歴史に誇りを持てない。極右の5%がそう思う。極左の60%がそう思う。

良い振る舞いを身につけるよりも、好奇心を持つことの方が重要だ。極右の21%がそう思う。極左の91%がそう思う。

白人はスタートの時点で既に有利になっている。極右の20%がそう思う。極左の94%がそう思う。

難民の受け入れについて

極右の約100%が難民の精査が不十分だと考え、極右の約30%がアメリカも含め、もっと外国は難民を受け入れるべきだと考えている。

極左の約0%が難民の精査が不十分だと考え、極左の約100%がアメリカも含め、もっと外国は難民を受け入れるべきだと考えている。

政治的に妥協してもいいかどうか

Wingに属する人(極右、伝統的保守派、極左)のうち49%が自分の政治的信念のために戦う。その他(伝統的リベラル、受動的リベラル、政治的無関心派、穏健派)の人のうち35%が自分の政治信念のために戦うと答えた。

進歩的活動家(極左)の特徴

主な関心事 気候変動、不平等、貧困。

政治が趣味と答える割合が73%(平均は35%)。

人生の成功不成功は、運と環境によると答える割合が75%(平均は25%)。

祈ったことがない人の割合が50%(平均は19%)。

アメリカ人であることが恥ずかしいと感じる人の割合が69%(平均は24%)。

大学卒の割合が59%(平均は29%)。

伝統的リベラルの特徴

主な関心事 リーダーシップ、社会の分断。

トランプ不支持の割合が93%(平均は57%)。

大卒の割合が48%(平均は29%)。

政治的無関心派の特徴

主な関心事 銃の問題、仕事・経済、テロ

地域活動(community activity)に参加したくない人の割合が78%(平均は34%)。

選挙登録している人の割合が52%(平均が72%)。

伝統的保守派の特徴

主な関心事 外交問題、仕事、テロ。

アメリカは金持ちや権力者に有利になるように不正が行われていると考える人の割合が47%(平均は80%)。

トランプ大統領の業績を支持する人の割合が49%(平均は19%)。

フォックス・ニュースを見る人の割合が41%(平均は19%)。

学歴はアメリカ人の平均と近い。

ひたむきな保守派(極右)の特徴

主な関心事 移民、テロ、仕事・経済

政治が趣味と答えた人の割合が63%(平均は35%)。

メキシコとの間に国境の壁を作ることに賛成なのが64%(平均が24%)。

妥協に反対なのが63%(平均が39%)。