日本酒の魅力は標準化されていないところにある

資本主義とグローバリゼーションによって、世の中の商品は刻々と標準化されていっている。

日本のどの県に行っても、似たような店が並ぶ。パソコンのOSならウインドウズかマックというように、小規模メーカーは徐々に駆逐され、大企業が市場を寡占していっている。

そんな中にあって、日本酒は寡占・標準化が進んでいない稀有な市場だと思う。小売店からして、やまやのような大規模酒小売りチェーン店もあるが、多くの酒店はいまだに個人商店である。だから、店ごとに品揃えが全然違っていて、それぞれの店を訪ねるのが楽しかったりする。

商品自体も多品種が少量生産されている状況にあり、全国で均一の商品が売られているわけではない。

同じ酒類でも、ビールなら基本的にアサヒ・サントリー・エビス・キリン・サッポロのどれかが供され、そのどれを飲んでも、同じように美味しい。飲み方も単一で、冷やして飲むに限る。

しかし、日本酒はメーカーである酒蔵が1400以上、銘柄は1万以上あるのだそうだ。

参考記事:日本酒の酒蔵・銘柄の数はどのくらい?地方別にみる味わいの特徴

同じ酒蔵の酒でも色々と差異があるし(酒米、精米歩合、火入れの有無など)、同じ酒蔵の同じ銘柄でも造られた年によって、当たり外れがあったりする。

ぱっと思いつく、日本酒の美味しさを左右する要素には下記のものがある。(詳しい人はもっと思いつくに違いない。酵母の種類とか)

  • 純米かアル添か
  • 精米歩合(米をどれだけ削ったか)
  • 酒米の種類
  • 火入れの有無
  • 熟成期間
  • 保管状態
  • 山廃・生酛かそうでないか
  • 開栓してから何日経ったか
  • 何度で飲んだか(冷かお燗か)
  • 本人の体調、空腹具合
  • 一緒に食べた食べ物

ビールは、さきほど挙げた有名メーカーの物を飲めば、基本的にどれも美味しいだろうが、日本酒はそうとは限らない。ランダムに選んだ場合、半数以上は美味しく感じないかもしれない。それくらい外れのようなお酒があるように思う(味覚に関する許容度は人それぞれだから、人によっては日本酒ならなんでも美味しいと感じるかもしれないし、厳しい人からすれば、美味しい銘柄は全体の10%以下かもしれない)。

とにかく当たり外れが、他の標準化された商品とくらべて激しいのである。

美味しくなくて、1合飲んだ後、全て流してしまいたいようなものもあれば、涙ぐんでしまうほど美味しい日本酒もある。

このように日本酒は現代社会では珍しい、混沌・未整理を楽しめる対象なのである。個人の探究心を駆り立て、目利き力を試し、そして老いを加速させる謎の飲み物である(日本酒は単品では飲みにくいのでつまみを一緒に摂ることから、飲むと太る。度数が強いからか翌日に二日酔いが残る。なぜか日本酒を飲んだ翌日は頭髪が薄くなっている気がする。さらに脳の働きがおかしくなり、飲んだ翌日は痴呆のようになる)。

こういう不可思議で、個人に負担をかけるところが日本酒の魅力であると思う。

資本主義の力に反して、日本酒の混沌とした状態が今後も数十年続いていって欲しい。つまらない標準化に陥らないで欲しい。探究心を駆り立てるほどの酒蔵の数が維持されて欲しい。

今日はこの天狗舞という酒を酒店で買ってみたが、検索するとアマゾンでも買えるようだ。地酒屋はいよいよ大変ではないだろうか。

コメント

  1. O1S3 より:

    流石に日本酒が美味しいのは10%は言い過ぎなんじゃないですかね?
    老いを加速させるというのも疑問です。多分体質的に合わないとかもあるとは思いますし、どのお酒も飲む量次第ですよ。私は老いを加速させると感じるのはワイン、ビールとか感じますが、日本酒では余り感じたことはないですね。日本酒の成分は結構優秀なものが多いです。特にαGGとかは肌に良いですし、日本酒関係の化粧品は結構素晴らしいなと思います。単品で飲むのも美味しいのはあります。ビールは私は苦手なので実際大手のビールは嫌いです。クラフトビールとかは好きですが。
    ただ、ローカルというかドメスティックな部分はあるなとは感じますね。ビールみたいに手軽ではないし、ワインのように表現の指標やブランディングがあるわけではない、初心者にはどれが良いかという指標もあやふやだし敷居が高いように思えるのは感じます。後は保存の問題とか瓶が基本で扱いが面倒とか、コンビニとかスーパーに売っているものは管理が適当なので劣化して外れが多いですし、そういう問題もあります。
    一旦はまると面白い世界だとも思いますがね。
    日本酒は味が良い意味でも悪い意味でも現代では幅広いので統一感がないというのは同感です

  2. nextir35 より:

    >O1S3さん
    コメントありがとうございます。10%の話は、そういう、味に厳しい人もいるんじゃないかなという仮定の話で書きました。実際のところはわかりません。
    老いについては、単に私がそういう年齢なのかもしれません(笑)。日本酒は奥深く、面白いですよね。