法人を作って株式投資をすることの長所、短所比較(加筆あり)

株式投資を行う場合に法人化する意味はあるか?

株式投資を行って生きていく場合に、法人を作って、法人を通して投資を行うメリットはあるのかどうか考えました。まだ勉強中で知識が中途半端ですが、いい面と悪い面がありますので、それを挙げていこうと思います。

※その後、実際に法人を作ったので、作ってみてわかったことを青字で加筆しています。

株式投資のために法人を作るメリット

1.法人から給料を受け取ることができる

法人から役員報酬を受け取ることができますので、収入証明が必要な場合に他者に収入額を示すことができます

収入の証明が必要になる場面は、おそらくそこそこあるのではないでしょうか?個人で株式投資をしている場合、申告分離課税を選んでいると所得に反映されませんし、仮に総合課税を選んでいても、将来の収入がいくらになるか不明な印象を与えてしまうかと思います。海外でリタイアメントビザを取る場合に収入証明が必要になることがあります。

2.株式投資と他の投資や事業(FX、先物、不動産など)の損益を合算できる

たとえば、株式投資では損失が出ているけれども、FXでは利益が出ている場合、個人の立場で投資をすると損益を合算できず、FXの利益分所得が増えますが、法人名義で投資をすると損益を合算できます。FXだけでなく不動産投資など、事業として行っている活動は、すべて損益を合算できますので、いろいろな投資をしていて、トータルで見るとあまり儲かっていない場合、節税できるかもしれません。

※たとえば、不動産を会社名義で社宅として買うと、建物の減価償却費を費用計上することができます。社宅に設置する家具も費用にできるでしょう。社宅には家賃を払う必要がありますが、一般の家賃相場より安い家賃設定にできます。

3.収益の額によっては、税金や社会保険料額を減らすことができる

個人が申告分離課税で投資をする場合は、所得税が約20%かかりますが、資本金1億円以下の法人にかかる法人税は年間所得800万円以下の部分については15%の法人税となりますので、役員報酬と法人所得が小さければ所得税+社会保険料の額を小さくできます。

ただし、この面にはあまり期待しない方がいいかと思います。収益がいくらになるか事前にわからないことが多いからです。たいていの場合、所得税+社会保険料の額は上がると考えた方がいいと思います。また、資本金1億円以下の法人にかかる年間所得800万円超の部分については、法人税率は25.5%かかります。

4.海外に住んでいても日本株の投資ができる

秒速で1億稼ぐ人が、シンガポールに住んでいるのに何で日本株投資できるんだ!?とつっこまれていたのをネット上で見ましたが、法人を通せば、日本に住んでいなくても日本株に投資できます。日本株でしか稼げない!でも日本に住みたくないという人には、法人設立がお勧めです。

ただ、私の見聞したところによれば、海外に住んでいても、郵便物を受け取れるようにしておけば証券口座はそうそう凍結されないようです。住民票を実家の住所に入れておいて、家族に郵便物を受け取ってもらえば、海外に住んでいても日本株への投資は問題ないと思います(断言はできませんが・・)。国民年金と国民健康保険料を払うことになりますが、ショバ代としては安いのではないでしょうか。

5.会社経営者を名乗ることができる

あまり重要ではありませんが、会社経営者を名乗ることができるようになります。個人投資家を名乗るよりは社会的信用が増すかもしれません。

子どもがいると、いろいろな申請時に親の職業を記載することになります。このとき、会社役員と書けると精神的に楽です。

6.ハイレバでFXを行うことができる

個人のレバレッジよりも高い、200倍などのレバレッジをかけられるようです。

7.諸経費を費用計上できる

書籍代、電話代、交通費、新聞代、交際費などを経費に計上できます。

株式投資にもさまざまな経費はかかります。日経新聞を買ったり、他の投資家と歓談したり、有料セミナーに参加したり・・。それらの費用を利益と相殺できます。

8.家族を社員にすることで相続税を節税できる可能性がある

家族を役員や社員として雇い、給料を払うことで、相続税を節税できる可能性もあります。一般的な相続税対策は、生前贈与だと思いますが、贈与税を発生させずに贈与できる金額(年間110万円)は少ないです。なので、将来相続人となる予定の家族を社員にして給料を払っておけば、事前に低税率で(給料の額にもよりますが)資産を承継させることができるかと思います。

9.クレカの審査が通りやすくなる

会社経営者として申請するほうが(個人投資家として申請する場合に比べて)、クレジットカードの審査は通りやすくなるはずです。私は会社設立後、5枚程度クレカを新規に作成しましたが、全て審査に合格できました。個人口座名義、法人口座名義両方です。

ただ、個人投資家でも「資産生活者」として申請するとクレカの審査が通ることもあるようです。

10.海外のリタイアメントビザが取りやすくなる

私はフィリピンとマレーシアのリタイアメントビザを取得しましたが、どちらも申請時に職業の記載が必要です。マレーシアのビザの場合は、定期的な収入が一定程度必要なので、法人を作って自分に給料を払う方式だと審査の基準を満たせやすいです。

株式投資を行うために法人を作るデメリット

1.給料にかかる社会保険料が高い

最近、社会保険料が高いことが話題になっていますが、会社から給料を受け取ろうとすると、その社会保険料の高さに驚くと思います。お金を個人口座から法人口座に資本金として移動させて、給料としてもとに戻すだけで、とんでもない額の社会保険料が飛んでいきます

孫正義方式で、役員報酬をゼロにして、配当のみ貰うという手もありかもしれません。役員報酬がゼロの場合、国民年金+国民健康保険を支払うことになります。

※従業員を雇っていない企業の場合、厚生年金や健保に加入せず、国年、国保のままでも問題ないと知人から聞きました。ただ、国としては、零細企業であっても今後は厚年・健保に加入させたい意向のようです。

一人社長の法人がどれだけ厳格に厚生年金、健康保険に加入しなければならないかによって、法人設立のメリット・デメリットは大きく変わってきそうです。

2.法人税や所得税、住民税の合計が増える

法人税が25.5%、そのほかに事業税、法人住民税がかかりますし、給料分の所得税、住民税も払わなければなりません。社会保険料も合わせて、税金の支払い額はトータルで増える確率が高いです。法人が赤字でも、法人住民税均等割が発生します。

3.手間が増える

税理士に委託することが多いでしょうが、それでも記帳や申告の手間が増えます。証券口座や銀行口座も管理する数が増えます。

法人として株式投資をすると、特定口座ではなく一般口座となり、自分で(もしくは税理士等に委託して)損益を計算することになります。

現物株は移動平均法、信用は個別法で利益を計算することになり、取引量が多いと利益の集計が手間になってきます。

現在、私は税理士に教わって、月次の収益を自分で計算していますが、その作業に毎月5~10時間程度かかっています。

法人として株式投資の損益を計算する方法について、別途記事を書きましたので御覧ください。

法人の株式売買の利益の計算の仕方


以上です。いかがでしょうか。普通に投資家として暮らす場合は、法人を作るメリットはあまりないように思います。下記の方面について、メリットがありそうな気がしますが、よくわかりません。ご存じの方は教えていただけると嬉しいです。

会社設立の手順

ネットや書籍で調べた会社設立の手順です。

1.定款作成、印鑑作成

※株式会社にするのか、合同会社にするのかによって定款作成時の手間が変わります。

自分一人で、会社の雑事をすべて行う場合は、印鑑は実印一つあればいいと思いますが、他人に銀行からお金をおろしてもらったりする場合は、別途銀行印を作成したほうが便利です。

2.資本金を自分の銀行口座に振り込む

※資本金は多くしすぎない方がいいでしょう。資本金が多くなると、法人税が増えるからです。資本金は千万円以下をおすすめします。

法人の投資元本は、資本金だけでは足りない分は、個人から企業に貸し付けるのがいいと思います。利息はゼロにして構いませんし、会社の資金に余裕ができれば機動的に資金を個人に戻すことができます。

もちろん、借用書はきちんと作成して保存しておかなければなりません。

3.設立登記

※10営業日くらいで登記が完了します

4.履歴事項全部証明書と印鑑証明を法務局で取得する
5.設立時貸借対照表、設立時株主名簿を作成
6.税務署に法人設立届を出す
7.銀行口座開設

※投資目的の法人の場合、メガバンクは審査が通りにくいようです。地銀や楽天銀行が通りやすいようです。審査は1週間から2週間かかることが多いようです。

※実際に楽天銀行に口座を作ることができました。ただ、楽天銀行だと口座振替による支払いに対応できないので、地銀にも口座を作った方がいいです。

8.証券口座開設

※証券口座は、楽天証券とSBI証券に開設しました。楽天証券で、信用取引やFX、オプション取引をできるようにするには、決算書等を送付して審査を受ける必要があります。なので、起業したての状態では、決算書が無いので信用取引等ができません。

それに対して、SBI証券は、特別な審査無しで信用取引、FX、オプション取引もできます。なので、法人名義で投資をする際は、SBI証券に口座開設するのがおすすめです。

ここまで終わらすのに1か月半から2か月かかるようです。

会社設立にかかる費用は、株式会社で20万円程度(定款認証代、定款謄本代、登録免許税)、合同会社で6万円(登録免許税)のようです。行政書士などの士業の方に払う手数料は2万円台が多いようです。

合同会社設立については下記書籍が詳しいのでおすすめです。

また、投資運用会社についてメリット、税制、会計について詳述された書籍も同著者から出ています。

その他、会社を設立したらやったほうがいいこと

ウェブサイトの作成

銀行口座の開設などでウェブサイトのURLが求められることがあります。簡単なものでかまいませんので、ウェブサイトを作っておくと役に立つと思います。

名刺の作成

株式投資を生業にする場合、他の人に会うことはあまりないと思いますが、本当にその会社が存在するかどうか確認するために名刺の提示を求められることがあります(携帯電話の名義変更時に、ソフトバンクで名刺の提示を求められました)。

名刺は作っておきましょう。

クレジットカードの作成

法人社長名義のクレジットカードも決済のために作っておくべきです。web上で買い物をする場合はクレカ決済がもっとも便利です。

個人名義のクレカで決済し、後で会社と個人間の精算をするという手もありますが、記帳の手間が増えますし、うっかり精算を忘れる可能性もあります。

税理士との契約

経理、税務に詳しい人でないならば、それらの業務を税理士に委託するのが妥当だと思われます。株式投資のみが業務内容であれば、記帳も簡単なので顧問料が安くなるかもしれません。経理、税務に詳しい人でも、それらを自分でやるとなると平日の株式市場が開いている時間に出かけなければならなくなると思います。なので、詳しい方にも税理士への委託をおすすめします。

※東京近郊にお住まいの方に、法人で株式投資を行っている企業の税務に詳しい税理士・公認会計士を紹介しています。興味のある方は nextir36@gmail.comまでメールをください。