2021年にすごいと思った歌手2選

個人をとりまく音楽の状況は近年、正常化したように思う。テレビを持っていないからそう思うだけなのかもしれないが、かつての、マーケティングや心理学を悪用したプロデュース系音楽(小室哲哉、つんく、秋元康)の流行が弱まり、純粋に音楽の良し悪しで歌手が評価されるようになったのではないか?

ユーチューブなどの配信サービスが勧めてくる歌手を聴いていけば、自分の趣味に合う歌手を深堀りすることができる。

2021年は二人の歌手に驚かされた。どちらも20歳前後の若者である。

mega shinnosuke

一人目のおすすめ若手歌手は、mega shinnosukeだ。2000年生まれ、福岡出身。メガシンノスケは本名だそうだ。

「お洒落すぎてどうしよう」を最初に聴いたが驚いた。荒い画質、しょぼいポリゴンアニメ、90年代ファッション。そして当時の曲が持っていたシンプルな明るさ、前向きさ。2000年生まれの若者が90年代が持っていた良いところを詰め合わせて、作曲しているのである。

街で出会ったすてきな女性に一目惚れした!お洒落でありたい!一緒に街に出かけたい!という最近の曲では見かけなくなった前向きな明るさを意識的にかかげている。これをさらりと成し遂げているのがすごい。

↓こちらは「本音」という曲。ラブソングのようでいて、メガシンノスケの生きる覚悟を歌ったような曲。

「心配ないさ僕は 価値観の猛威で 人を殺すことに抵抗のない こんな世の中ですら愛せるから」

若くしてこんな腹の据わった「本音」を歌い上げられる彼に今後も期待したい。

メガシンノスケはポップな曲を作っているから、軟弱なタイプかと思う人もいるかもしれないが、例えるならブランキー・ジェット・シティの浅井健一に性格が近い気がする。

betcover!!

こちらは、作詞作曲・歌唱を担当している柳瀬二郎が1999年東京生まれ。

若手だけれども、楽曲は玄人ごのみ、作詞は自然の多い田舎で育った詩人が書いたような詩。

例えば、「棘を抜いて歩く」という曲の歌詞には

「彼岸に伸びてゆく線路を降りてしまった

僕の百個の車輪は鳥と泳ぐための幸せ

棘を抜いて歩く 八朔を盗んで歩く」

という一節があるが、「八朔を盗んで歩く」というフレーズはなかなか思いつけないのではないか?

最新アルバム「時間」に収められた曲はどれも秀逸で、特にその最初の曲「幽霊」はライブで映えそうな曲である。↓はリハーサルの動画。

この曲の歌詞も出だしから快調だ。

「幽霊が攻めてきた 海上

消化できずトイレに駆け込んだ

傘が二本、冷たい手と手が二本

ぎり繋がっている、まだね

『悪さしてごめんね』幽霊が言うよ

大丈夫、関東は今日も曇り」

言葉が喚起する画と曲調が混交して癖になる。

betcover!!の曲は、vaundyや藤井風のようなモテそうな曲ではない。だけに、彼が売れたら、日本の音楽シーンも成熟したということになるのではないか?