六-5-①.ロシア人とユダヤ人との抗争

ロシアの革命をお話するに当たっては、まずロシア人とユダヤ人との関係について、一応これを述べる必要がある。

帝政ロシアは申すまでもなく、現在のソビエトロシアのほかにポーランドを併有しておった。以前ポーランドのユダヤ人口は371万6千で、世界一のユダヤ人口を有し、またソビエトロシアは297万、すなわち約300万のユダヤ人を持ち、アメリカ合衆国に次いで、世界第三位のユダヤ民族包容国であった。

したがって昔の帝政ロシアは、このポーランドを合わせておったからして、合計約600余万のユダヤ民族を持っていたのである。当時世界のユダヤ人口は、約1355万と言われているから、帝政ロシアは世界ユダヤ人口の半数近くを保持していたのである。

帝政ロシアが昔から、ユダヤ人に関し種々なる問題を、しばしば惹起し、またこのロシアユダヤ人の中から、各種の有名なる人物が輩出しているのは、けだし当然のことである。

帝政時代において、昔からロシアはこのユダヤ人を非常に虐待したことは、有名な事実となっている。ロシアには「ボグロム」という言葉がある。これを訳して「ユダヤ人狩り」という、すなわちロシア官憲が、ユダヤ人をゲット(ユダヤ人街)から追放することを意味するもので、このボグロムがしばしば行われている。

ロシア官憲がなにゆえボグロムをしばしば実行したか、その第一の原因は、週休に基づくものと察せらるる、ロシアは耶蘇教の中でも、最も堅苦しいと言われるギリシャ正教国であった。したがって厳格にユダヤ教を奉ずるユダヤ人との、相互の反感もまた最も激烈である。また民族的に見て、その性格上純ロシア人たるスラブとユダヤ人とは、氷炭相容れざるものがある。

これらの点からロシアにおけるユダヤ民族は、いわゆるロシア人と常に争闘をつづけ、常に彼らから多大の圧迫を受けていたのである。現にロシアにはスラブ系の純ロシア人のほかに、ドイツ系、タタール系等50余の異種族が混然として生活を営んでいる。しかしユダヤ人を除いて他の種族は、概ねロシア人と同化し、種族的の反感や闘争の起こることは至って稀であった。ユダヤ人はたまに宗教、種族の相違ばかりでなく、その持ち前の狡猾と、排他的利己心等が、他の種族から忌み嫌われる原因の一つとなったのである。

かのロシア皇帝イワン四世は、1563年ボロツクを攻略した時、同地にユダヤ人あり如何に取り扱うべきやの問に対し、極度にユダヤ人を嫌悪せし皇帝は、即座にユダヤ人に対し「三分の一は追放し、三分の一は改宗し、三分の一は水に投ずべし」と宣告したことは有名な話である。

エルサレムのユダヤ博物館の二階各室全部は、ユダヤ人の被ったボグロムの記念館である。追放せられたユダヤ画家の筆になる、真にせまったボグロムの実写の油絵、その他の絵画、撃たれたユダヤ人が腹に巻いていた血染めのユダヤ聖典トーラ等、一見身震いするような残虐なる記念品が、幾百となく陳列され、見る人をしてボグロムの恐ろしき状況を、目のあたり彷彿せしむるものがある。かくのごとくユダヤ人とロシア人との抗争は、非常に激甚のものであった。したがってユダヤ人もまた帝政ロシアに対し、革命をもってこれに報復せんと、しばしば企図したのである。

以下ロシア革命突発に至るまでの、ユダヤ人の活動について述べることにするが、欧州文明をロシアに輸入し、諸外国の人材を盛んに採用し、未開のロシアを開発して、ついに大ロシア帝国の基礎を築いたペートル大帝は、ユダヤ人に関し次のように述べている。

「・・・朕は我がロシア国において、ユダヤ人よりもむしろ異教徒あるいは回教徒を見たきものなり、ユダヤ人は詐欺師にして詭計家なり。彼らがいかに努力し、いかに彼の隣人に贈賄するとも、我が国内においては、彼らのために住宅を建て、商業を営ましむるは能わざるなり」

と、露国振興のために、多数の外人を登用したペートル大帝さえも、ユダヤ人に対しては、好感は持たなかったようである。

またロシアの有名なる文豪トルストイはユダヤ人に関して次のように言っている。

「・・・・ユダヤ人は棒をもって諸君の背中を打たん、されど諸君はユダヤ人に叩頭頓首すべきなり」と、ロシア人のユダヤ人に対する感情の一部は、これをもって大要を察知することができる。

ロシア国内部におけるスラブ民族と、ユダヤ民族の抗争は、相互の宗教的、民族的不融和から、一つの抗争が次の争闘の原因をなし、更に原因が原因を生み、結果が結果を生じ、永年の間に、緩急張弛はあったが、その両民族の抗争は、ソビエトロシアの今日に至っても、なお継続されている。私は各種の方面から観察して、スラブ、ユダヤ両民族の氷炭相容れざる抗争は皇威遠く大陸に及び、両民族共に我が皇恩に浴せざる限り、今後といえども融和することなく、永遠に持続されるものと、確信して疑わない。

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