七-10.ナチスの台頭とユダヤ人の抗争

前述のごとく、ドイツにおけるユダヤ人勢力は、独り政治、経済方面ばかりでなく、社会の萬般に及び、その基礎はますます強固を加えた。大戦後ドイツ人が、逐次に常態を復するに及び、国粋気分がドイツ内に瀰漫し始め、遂にヒンデンブルグ元帥が大統領となった。そこで政界方面のドイツ勢力はようやく勃興したが、しかし国内各方面にわたって根強く築き上げられたユダヤ勢力は、もとより微動だにしなかった。ここにおいてナチスの活動が始まったのである。ナチスとは純ドイツ人をもって組織された国粋的団体の名称である。

欧州大戦後、ドイツの言論界は、全くユダヤ人に握られておった、それがためナチスのユダヤ人排斥に関する報道のごときもユダヤ人に依って、各国の横文字新聞に掲載されたのである。したがってこれらの通信に、ナチスの憎むべき横暴に対して、ユダヤ人の同情すべき状況のみが、多く伝えられたのは、やむを得ないことと思う、日本に伝えらるるのも、特別の視察観察談などは別として、多くはユダヤ通信の一部であるから、我々がその真相をとらえることは困難である。

私はもちろんナチス団の団員でもなく、またドイツユダヤ人に対してなんらの怨恩を有するものでないが、我々日本人が単に外国通信を見て、ユダヤ人を憐れみナチスの横暴を憎む前に、まずドイツに居るユダヤ人の状態を、一通り観察することが必要と思う。

そもそも世界における各民族は、各々その歴史、環境、能力、性質等に応じて、その有する文化に独自の特徴を持っている。日本の文化とアメリカの文化、ユダヤの文化とドイツの文化は、決して同じではない。各民族はこの異なった文化を向上していくことが、各民族の世界人類に貢献する所以であり、かつその文化的使命である。もしもアメリカが、全部日本文化をもって換えられたとしたならば、それはアメリカの文化的滅亡であり、アメリカの文化的使命の消滅である。

昔日本はインドおよび支那の文化を多く輸入したが、これによって日本の文化が消滅したのではなく、我が独特の文化に一層の光を添えたのである。今日本は欧米文化によって貢献せられているが、しかしこれがために日本文化を滅却して、欧米文化をしてこれに代わらしむが如きことがあっては、相済まないことである。

さてドイツナチス団のユダヤ人排斥は、日毎に伸びゆくユダヤの絶大な勢力に対して、起こったものであって、文化方面より言えば、ドイツの文学も芸術も音楽も、共にその影を潜め、ユダヤ文化がこれに代わりつつあったのである。すなわち劇場の監督官も美術学校長もユダヤ人であり、有名な音楽家も作曲家も皆ユダヤ人であったのである。

またドイツ人の子弟の多くは、ユダヤ教授の教育を受け、患者はユダヤ医師に生命を託し、訴訟はユダヤ法官によってさばかれ、一方ドイツ人の学者も法律家も失業状態の有様であった。またドイツの銀行も取引所も、全部ユダヤ人に押さえられ、前章にあるとおり、一流新聞たる有名なベルリーネル・ターゲブラットもフランクフルテル・ツアイツングもみなユダヤ新聞で、その上大通信社ウオルフさえユダヤ人経営であり、ついに十万の警察隊すら、ユダヤ指揮下に入るに至ったのである。

しかるにまた一方においては、ユダヤ人中共産党に通じ、ドイツの潜行的破壊作業を、盛んにやるものだからたまらない。このままに置けば、結局ドイツはどこに行くのであろうか、ここにおいてヒットラーが立ったのであって、最近の総選挙に1700万の国民投票を得たのも、ドイツ国民の対ユダヤ思想の現れにほかならないと思われるのである。

もし日本が、外来の異民族のために、かくのごとき状態に立ち至ったならば、我々日本人は黙っているであろうか、我が新聞雑誌に報道される様に、ユダヤ人を排斥するのは悪い、ユダヤ人は憐れなる同情すべき民族である、これを攻撃するのは世界文化の敵であると言うて、そのままユダヤ勢力下に沈黙していることができようか。

私はドイツナチス団の活動を見て、ユダヤ人が排斥されるのは、ユダヤ人が世界大戦の成功に乗じ、他国において、すなわちドイツにおいて、横暴に振る舞ったためであって、これはユダヤ人が悪いと思う、しかし一面においてはドイツ人が、今日の状態まで、ユダヤ人に勢力を占められたのが間違いで、排斥するくらいなら、なぜドイツ人は初めから、もっとしっかりしていなかったか、ということになる。されどドイツが、ヒットラーの如き、特に熱烈果断の愛国者を待たねばならなかった程、巧妙に張られたユダヤ網に対しては、敗戦後疲労困憊したドイツ人には、これを如何ともすることができず、ドイツの国土に事実上のユダヤ国を出現せしむるに至ったのではあるまいか。

それはとにかくとして、ユダヤ人の勢力は、単にドイツにばかりあるのではない、お隣の支那にも、フランスにも、またアメリカにもある。これらのユダヤ人がそれぞれ策動していることは、既にご承知の通りである。またドイツに金権を握る各国のユダヤ人が、ナチスに対する反抗は、ドイツ将来の財政に、いかなる影響を及ぼすであろうか、ナチスは初め頑としてユダヤ人に向かったが、間もなくその手が緩みつつあるのは、この間の消息を物語っていると聞いている。このドイツ人対ユダヤ人の抗争は、結局ドイツ国の運命を左右するもので、色々の意味から、我々が慎重に注目すべき大なる問題であると思う。

世界列強はいずれも、ユダヤ人排斥の歴史を持っているが、独り我が日本帝国は、いまだかつてユダヤ人を排斥した歴史を持たないのである。吾人は将来とも、欧米の轍を踏んでユダヤ人を排斥せねばならぬような国柄となりたくないものである。

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