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「暴力の連鎖」幻想

   

私達は「私達のうちの誰かが暴力を放棄すれば、そこで暴力の連鎖が途絶え、長期にわたる平和が訪れる」という幻想を好んでいる。

こういう風に考えたのは、警察官クビになってからブログ「子供への暴力が生み出す『負の連鎖』」という記事を読んだのがきっかけだ。

この記事で、著者は他の子供に暴力をふるういじめっ子(タケルくん)の思い出を語る。しかしそのいじめっ子も、「お母さんに言うよ」と親に告げ口することをほのめかすと、恐怖で泣き出しそうになり、問題行動を止めてしまう。ブログの著者は、「彼のお母様は恐らく、彼に酷い暴力を振るっているのでしょう。だからタケルも暴力を振るう。いや・・・・・・暴力を楽しむ。」と書いている。

本文にはそう書かれていないが、ブログ記事のタイトルからして、「親が子供に振るう暴力が連鎖して次世代に伝わっていく」と筆者が考えていることがわかる。

たいていの日本人はここで、親、子、孫の誰かが次世代に暴力を振るうのをやめれば、暴力が次の世代に伝わることはないのにと考えるのではないだろうか?

この考え方は通俗的な心理学の書籍にも見られる。あなたは親に虐待されたかもしれない、しかしあなたを虐待した親もかつてはその親に虐待された被害者だったのだ、だからそれを知ったあなたはあなたを虐待した親を許し、虐待の連鎖を絶たねばならない、という具合にだ。

しかしこのよくできたストーリーが本当がどうかは疑わしい。暴力的な性向は、行動によって次世代に伝わっているのではなく遺伝によって伝わっているのかもしれない。また、教育においてあらゆる暴力を使わないことがいいことだとも思えない。社会に警察や刑務所、裁判所のような暴力装置が存在する以上、人間の子供にも行動を制御するための暴力装置(親)は必要だろう。暴力は放棄するのではなく、適切に使われるべきなのだ。

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同様に二つの争い合う集団も、どちらか一方が暴力を放棄すれば、その集団間に争いは生じなくなるという物語も流布している。

しかし、この考えも幻想だろう。短期的には、誰かの許しや和解が争いや暴力を止めるかもしれない。しかし、一時的な争いの停止は永続的に争いが起こらないことを保証しないだから、私たちは一時的に対立する誰かと和解したとしても、相手を監視し、油断せず、武装解除せずにいなければならない

というのも、私達はいずれ老いて死に、私達の子や孫が私達にとってかわるが、人間は新たに生まれる度に知識がゼロにリセットされてしまうその一方で、人間の子供は生得的な本能として闘争や報復といった感情を持って生まれてくる。だから、永続的な和解といったものは存在しがたい。

もちろん和解や許しの感情は尊い。しかし、前述したように、そこで警戒心を捨て去ってはならないのだ。

場合によっては、争い合う二つの集団の片方は敗北してそのまま消滅してしまい、歴史は勝利した側によって書き換えられ、消滅した側の声は未来に存在しないということもありうる。中国に併合されたチベットはこの状態に近い。

日本人の間に通底するこの「暴力の連鎖」幻想は敗戦と平和憲法の導入を下地に広まったのだと思う。私は平和憲法が改正され、適切な警戒心(軍隊)が導入されることを望んでいる。

※暗い気持ちになること間違い無し!のチベット漫画、慈悲と修羅。読んだことが無い方は是非ご一読ください。

 - エッセイ

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