高橋洋一の議論はやっぱりおかしい

zakzakの高橋洋一のコラムを読んでみたが、やはり内容がおかしいのでツッコみたい。

増税にこだわり「資産売却」を嫌がる財務省 その理由は「天下りができなくなる」から

まず最初の段落。

いまから20年あまり前のことだが、旧大蔵省の官僚だった筆者が政府のバランスシート(貸借対照表)を作ってみると、それほど国の財政状況は悪くないことが分かった。徴税権と日銀保有国債を合算すれば、資産が負債を上回っていることも分かった。

以下、ツッコミ。

徴税権を資産に計上していいわけがない。企業に例えれば、将来得られる見込みの利益の権利を資産に計上するというのである。赤字を続けていて、今後もその改善の見込みが薄い企業がそのように主張して誰が納得するのだろうか?徴税権を資産計上していいのなら、支出義務も負債計上しなければならないのではないだろうか?

日銀の保有国債を資産に計上していいわけがない。国債を発行している国が、中央銀行に国債を買わせているから、資産に計上してもいいのなら、いくら国債を発行しても国のBSは傷まないことになってしまう。仮に日銀と政府の統合BSを元に考えるなら、日銀の負債を政府の負債勘定に組み入れなければならない。

第二段落

その財政事情の本質は、現在まで変わっていない。資産といっても、一般の人が想定するような土地や建物などの有形固定資産は全資産の2割にも満たない程度で、大半は売却容易な金融資産である。しかもその金融資産は政府関係機関への出資・貸付金などの資金提供だ。

以下、ツッコミ。

国の資産は大半が売却容易な金融資産だというが、平成28年度の日本の貸借対照表を見ると、有価証券が369兆円、出資金は18兆円、貸付金は157兆円だ。総資産は986兆円である。資産負債差額(債務超過額)は483兆円である。

確かに有価証券と貸付金の金額は大きく、これらが簡単に換金できるのであれば素晴らしいが本当だろうか?こちらのブログが検討を加えている。

国の財務諸表を読んでみた(その2)

上記ブログでは換金容易とは捉えられていない。そう思う。有価証券に含まれる米国債等はいざとなれば売ってしまえばいいだろうが、出資金は金額が小さいし、貸付金は売却していいものなのか不明だ。高橋氏は、「大半は売却容易な金融資産」だというなら、何がどれくらい売れるのか推定値を示すべきではないか?

次。

筆者は当時の上司に対して、ファイナンス論によれば、政府のバランスシート(つまり日本の財政)はそれほど悪くないことを伝えた。もし借金を返済する必要があるというのであれば、まずは資産を売却すればいいと進言したら、「それでは天下りができなくなってしまう。資産を温存したうえで、増税で借金を返す理論武装をしろ」と言われた。財務省が、債務返済のために増税を主張する一方で、資産売却に消極的であるのは、このように天下り先確保の事情があるからだ。

20年前の上司(名前不明)の発言を元に、国家財政が健全か・健全でないか、あるいは財務省に陰謀があるのか・無いのかを決定してもいいのだろうか?財務省に高橋氏が述べるような意図があったとして、それがどれほどの金額の影響力を持つのだろうか?

最後の方、

ちなみに、先日の本コラムで紹介した国際通貨基金(IMF)の報告書によれば、ギリシャと英国のネット負債残高対国内総生産(GDP)比はそれぞれ90%、110%程度と世界の中で最悪の部類だ。逆にいえば、日本はそこまで財政状況が悪くなく、資産売却まで追い込まれていないわけで、天下り先確保に支障が生じていないともいえる。なお、借金を借り換えれば資産売却は不要だ。

英国やギリシャは国家財政がピンチになる度に、国有財産を売ってきたことがまず紹介される。高橋氏の主張が変なのは、日本は資産売却していないから、ギリシャと英国よりましだという論理展開をしている点だ。日本は国有財産を売っている。

財務省のウェブサイトに国有財産の売却情報が載っているが、政府保有株式の売出しだけを見ても、2012年以降、JT、NTT、郵政の株を売っている。また、ネット負債残高GDP比は日本は236%であり、ギリシャ・英国よりも悪い。資産売却していないという嘘の前提をもとに、負債GDP比が世界1位の日本の財政状況が悪くないというのは変だ。

借金を借り換えれば資産売却は不要だという主張も変だ。国債には金利があるので財政赤字を続けていれば、赤字分と金利分の負債が増えていく。一部の人たちが日本の財政に悲観的なのは、現在の国債金利は日銀がコントロールした不当に低い金利であり、いずれそのコントロールができなくなることが予想されているからだ。日銀が国債を買い付ける資力を失えば、日本は国債の買い手が見つかるまで金利を上げなければならない。米国の金利が3%を超える状況下なのだから、日本国債もそれくらいの金利を付けないと買われないだろう(あなたは米国債よりも金利が低い日本国債を買いたいだろうか?)。そうなった場合に、日本が支払わなければならない金利は大きく増える。

全体を通して高橋洋一氏は、具体的な数値を挙げないのが変だし、政府の財政収支改善に触れないのも変である。仮に遊休資産を売却して、一時的に政府に現金が手に入ったとしても、基本的な収支が赤字のままであれば、問題解決にはならない。また、財務省の陰謀があるというのなら、具体的な証拠とその影響力を提示すべきだ。

国防は安全主義、財政は冒険主義でいいのだろうか?

国防に関して、政府が「なんとかなるさ」というスタンスで居られたら困るだろう。悲観的にあらゆる可能性を考えて、万全を期してほしいはずだ。そうでないとどこかの国に侵攻されるかもしれないからである。

同じ様に財政に関しても「なんとかなるさ」のスタンスでいてはいけないのではないだろうか?というのも、財政が悪化し続ければ、政府支出の切り詰め、増税、インフレ、金利アップ、円安などが考えられ、影響が大きいからである。貧しい人は政府支出の切り詰めで、社会福祉サービスが受けられなくなるもしれないし、裕福な人はインフレや円安で資産価値が一気に減るかもしれない。国防ほどではないにしても、財政に関しても万全を期すべきではないのだろうか?

関連記事:高橋洋一の財政理論は間違いだらけ

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