ノーベル医学賞受賞者であり、イベルメクチンの元になる菌を発見した大村智氏、八木澤守正氏(北里大学)、花木秀明氏(北里大学)らの共著「イベルメクチン」が河出書房新社から発売された。
大村氏の講演を元に起筆された第一章「古くて新しいイベルメクチン物語」をざっと読んだが、イベルメクチンはコロナウイルスに対して、予防・治療効果があるであろうと確信できた。
以下、書籍からイベルメクチンに関するあれこれについて抜粋・要約してみた。
大村智先生の経歴
1968年 北里研究所でのマクロライド系抗生物質である「ロイコマイシンの構造解析に関する研究」で薬学博士を取得、北里大学薬学部助教授に就任。
1970年 「ロイコマイシン、スピラマイシン及びセルレニンの絶対構造」により東京理科大学から理学博士を取得。
1971年 ウエスレーヤン大学化学部に留学。その後、北里大学に帰任することになるが、帰任前にメルク社と共同研究契約を結ぶ。
1973年 北里研究所にて抗生物質研究室の室長に就任。
1974年 静岡県伊東市川奈のゴルフ場近くで採取した土壌から特殊な放線菌を分離することに成功。その放線菌はエバーメクチンという物質を産生でき、エバーメクチンがイベルメクチンの元になった。
1975年 北里大学薬学部教授に就任。以後、大村研究室から32人の大学教授と120人の博士を輩出。
2015年 ノーベル生理学・医学賞受賞。受賞理由は線虫感染症の新しい治療法の発見。
イベルメクチン薬の経歴
1981年 動物の抗寄生虫薬として販売開始。1984年から20年間、世界の動物薬として売上1位となる。
1987年 オンコセルカ症(河川盲目賞)への適応が認められる。感染者は当時、世界で2,000万人いたがイベルメクチンがそのほとんどを撲滅した。
2000年 リンパ系フィラリア症への適応が認められる。感染者数は当時で1.2億人。オンコセルカ症とリンパ系フィラリア症が蔓延している地域は重なる事が多く(アフリカなど)、両方にイベルメクチンが使用され、現在では年間3億人以上の人がイベルメクチンで治療を受けている。
2002年 イベルメクチンが腸管糞線虫症の特効薬として市販される。
2006年 疥癬への適応が認められる。
2020年 米国人のポール・マリック博士ら(FLCCCという団体)が新型コロナ治療に対する薬としてイベルメクチンに関する複数の研究をメタ分析し、イベルメクチンが最も優れているという結論を出す。
近年 抗がん活性、抗ウイルス活性が見いだされる。フラビウイルス(日本脳炎ウイルス、デング熱ウイルス、ジカウイルス、西ナイルウイルスなど)の増殖を阻害するという報告もある。
イベルメクチンの安全性について
仮に適応量の8倍飲んでも問題がない安全な薬。
イベルメクチンのコロナウイルスに対する効果
新型コロナ救命治療最前線同盟(FLCCC)というアメリカの医師集団の研究によれば、コロナウイルスに対してイベルメクチンに関して以下の結論を出した。
- 新型コロナやインフルエンザを含む多くのウイルスの複製を阻害する。
- 多種多様な機序による強力な抗炎症作用を有している。
- 動物試験において新型コロナウイルス量を減少させ、臓器の損傷を防ぐ。
- 曝露前あるいは曝露後に新型コロナウイルスの伝播を防ぐ。
- 患者の回復を早め、入院の必要性と死亡率を減少させる。
- 広く使用されている地域では、感染者が少なく、致死率が著しく低い。
約7,000人を対象にした11試験の結果を見ると、予防効果では全体で87%が改善されていた。
感染者に対する投与試験では、感染初期では82%で改善が見られ、後期(重症)では51%で改善が見られた。
死亡率では75%の改善が見られた。
動物実験の成績
北里大学で行われた研究では、ベロ細胞という培養細胞株に新型コロナウイルスを感染させ、イベルメクチンを投与したところ、ウイルスの増殖を阻害することが明らかになった。
ハムスターに新型コロナウイルスを感染させた実験では、イベルメクチンを投与した群は、投与しなかった群に比べて、3日めでウイルス量が10分の1に低下していることがわかった。ハムスターの血漿を分析するとウイルス中和抗体が増加しており、ワクチンなどの効果を高めるアジュバント様効果を持っていることが示唆された。
マウスを使った実験では、肺炎に感染させたマウスにイベルメクチンを投与したところ、炎症性サイトカインを減少させ、高い抗炎症作用があることが示唆された。
イベルメクチンがコロナウイルス死者等を減少させた事例
2020年8月の時点でペルーでは、1日600人以上がコロナウイルスで亡くなっていたが、イベルメクチンの配布を始めたところ、死者が減少しだし、11月には1日100人以下になった。同月、大統領が変わり、イベルメクチンが規制されると、死者数・感染者数が元に戻った。
ポルトガルでは2021年1月からイベルメクチンを使うようになったが、新規感染者数が減少していった。
インドで2020年にコロナ感染が増加した時期、イベルメクチンを治療・予防に使用できるようにした州が出てきたが、そうした州から感染者数が減少していった。
ブラジルでもいくつかの州が感染予防のためにイベルメクチンを配布したが、配布しなかった州と比べて感染者数・死亡者数が顕著に減った。
ハイチ(人口1200万人)は、毎年フィラリア症予防のために120万人にイベルメクチンを配布しているが、隣国と比べて感染者数・死亡者数が少ない。
新型コロナに対するイベルメクチンの作用機序
イベルメクチンは、細胞内へのウイルスの侵入を阻止する効果、細胞内に入ったとしても複製を阻害する効果がある。
イベルメクチンには抗炎症効果があり、炎症性サイトカインを抑制する。
気管支、肺、心臓、腎臓、消化器などにACEレセプターがあり、コロナウイルスはこれと結合して感染するが、イベルメクチンは、その結合を防ぐ。ウイルスが細胞の中に入れなくなる。
イベルメクチンはメインプロテアーゼという酵素に結合して、ウイルスの増殖を阻害するという説もある。
イベルメクチンはα/β1の機能を阻害するという説もある(インポーチン阻害)。
イベルメクチンは、ウイルスが細胞の中に侵入してくると発現されるシグナルを伝達する物質を阻害するという説もある。
※詳しくは書籍「イベルメクチン」の第4章を読んでみてください。
コロナウイルス対策時のイベルメクチンの服用量
FLCCCとBIRD(英国イベルメクチン推奨開発)が提案した適応量。
初期段階 体重1キロ当たり、0.2-0.4ミリグラムを5日間服用
中等症で入院が長引く場合 体重1キロ当たり、0.4-0.6ミリグラムをさらに5日間服用
発症予防 体重1キロ当たり、0.2ミリグラム 毎週1回あるいは2週間に1回
今後、イベルメクチンが日本でコロナ薬となるのか?
北里大学などがイベルメクチンを使ったコロナウイルス適応のための臨床試験を行っているが、イベルメクチンの権利を持っているMSD(メルクの国内法人)に適応拡大の意思がないため、治験が成功しても、適応拡大の申請がされず、望みが薄かった。
しかし、北里大学の要請に応じて、興和がMSDのストロメクトール(イベルメクチンの製品名)以外の製品を用いて臨床試験を行うことになった(2021年内試験完了を目指す)ので、興和が治験に成功すれば、興和から「抗新型コロナ薬」としてイベルメクチンが販売される。
おまけ)イベルメクチンを海外輸入して飲んでみた私の体験談
イベルメクチンは、海外輸入で購入することができる。私はオオサカ堂からイベルメクトール(12mg50錠)を約7,000円で購入した。注文、入金後、2週間もかからず家に届き、飲んでみたが、特に副作用はなかった。写真からインド製だとわかる。
※コロナが怖いから飲んだのではなく、単に興味本位で購入し服用した。イベルメクトールは、イベルメクチンのウインドラス・バイオテック社の製品名。