政治家にはコロナウイルス問題の根本の部分にこそ意見を出してほしい

私は主に自民党の政治家のツイッターをフォローしているが、自民党の政治家といえども、安倍総理の政策に反対意見を表明する事は多々あった。例えば、外交・安全保障の問題に関しては、保守系の議員からしばしば異論が表明された。

現在、コロナウイルス対策が喫緊の課題とされている。各議員は、どうしたら感染拡大を防げるかとか、医療の運営をどうするかとか、どこに金をばらまくかとか、経済的な打撃をどう和らげるかといった枝葉末節の対策の部分でアレコレ意見を表明している。

しかし、そうした対策を打ち出すための想定の基となる、肝心の下記の部分に関してはほとんど誰も異論を出していない(多分)。

  1. コロナウイルスによる致死率・基本再生産数・実効再生産数は本当は日本ではどれくらいなのか?
  2. 何人の死者までなら許容範囲なのか?
  3. コロナウイルスの拡大を防ぐためにどれくらい経済を毀損してもいいのか?

1は非常に大切な部分である。当初、コロナウイルスによる致死率は1%強とされた(中国のデータから)。しかし、現状、各国の致死率はもっと低いことが示唆されている。例えば、米国では把握されていない感染者が、把握されている感染者の50倍いる可能性があるというデータが出ている。

新型コロナ感染拡大の実態、鍵は抗体検査か-米で85倍との結果も

これが本当なら、致死率は、死亡者数÷(把握された感染者数×50)で計算されることになる。この記事を書いている時点で、アメリカの累計感染者数は923,812人、死亡者数は52,097人。単純に致死率を計算すれば、5.6%となるが、把握されていない感染者が把握されている感染者数の50倍いるのなら、致死率は0.11%まで下がる。

BCGワクチン接種国では、致死率はもっと下がることが示唆されているので、日本の致死率は0.1%未満だろう。

政治家にはもっとこうした部分で意見表明してほしい。こうした知見が活用されれば、西浦教授などが出した見積もりは過大だと理解されるはずだし、政策も変わってくるはずだ。

2も重要な部分で、どれくらいの死者数までは許容範囲なのかは議論されるべきところだろう。一人でも多く死者数を減らす、と考えれば、無限に対策コストが大きくなってしまうが、コロナウイルスによる死者は主に高齢者であり、コロナウイルスによる死者の減少は、実際には、平均寿命に近い年齢の人たちを一時的に延命させているだけで、数年経てば、彼ら彼女らは他の要因で死亡する可能性が高い。

毎年130万人が亡くなる(肺炎で8万人、インフルエンザで2-3千人)日本で、コロナウイルスによる死亡だけを特別視するのは合理的ではない。一定の死亡者数は許容すべきだし、その数値もあらかじめ算出しておくべきである。

3もとても重要で、今後、緊急事態宣言を延長するような事があれば、経済の毀損はさらに拡大する。仮に延長がなかったとしても、マスコミが植え付けた恐怖感が持続すれば、観光業などは客足が戻らない事になる。経済の毀損によっても人は死ぬし、不幸になるので、どの程度まで経済を毀損するのが許容範囲なのかも議論されるべきところだ。

しかし、こうした根本的な部分への各自の意見表明は、与党の政治家からも、野党の政治家からも出ておらず、とても残念だ。枝葉末節の対策だけでなく、根本的な部分(リスク推定、死者や経済への毀損をどれくらい許容するのかなど)について意見表明してほしい。