プラスチック問題は、人類の長い課題になりそう

「海洋プラゴミ問題」という言葉を最近、目にする。海にプラスチックゴミ(ペットボトル、レジ袋等)が流れ出し、それが魚などに摂取され、巡り巡って人体にも悪影響を及ぼすなど多々問題があるようだ。しかも、既存の海洋に流出したプラスチックゴミの90%は沈んでいるそうで、仮に回収しようという機運が出たとしても、解決までに長い時間がかかりそうである。

また、合成繊維(ナイロン、ポリエステル、ポリウレタンなど)でできた服を洗濯すると、プラスチックの粒子が発生し、洗濯水としてやはり河川や海に流出して、それもまた魚などに摂取されてしまうそうだ。

プラスチックから熱などの影響で人体に有害な物質が流出することもあり、それが不妊や人々の中性化につながっているという研究もある。

以前、男性の草食化やオカマ化について記事を書き、その原因をスマホや環境ホルモンではないかと書いたが、

参考記事:若者の草食化をもっともよく説明できている理論はなにか

参考記事:日本男児のオカマ化に危機感を覚える

世界に蔓延するプラスチックがこれらの原因なのかもしれない。

シャンタル・プラモンドン著「プラスチック・フリー生活 今すぐできる小さな革命」という本をざーっと読んだ。この本を参考にプラスチックの問題点と対策法を簡略にまとめてみたい。

そもそもプラスチックとは?

プラスチックの種類として、上記書籍では

  • ポリエチレンテレフタレート
  • ポリエチレン
  • ポリプロピレン
  • ポリ塩化ビニール
  • ポリスチレン
  • ポリウレタン
  • ポリカーボネート
  • エポキシ樹脂
  • アクリル
  • ポリアミド(ナイロンなど)
  • ポリテトラフルオロエチレン
  • メラミン樹脂
  • 合成ゴム
  • プラスチック繊維
  • シリコーン

を挙げている。

詳細は本書を読んでいただくとして、

【絶対避けたいもの】として、ポリ塩化ビニールが挙げられ、

【避けたいもの】として、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、メラミン樹脂、合成ゴム、プラスチック繊維が挙げられている。

プラスチックはなぜ有害か?

1.有害な物質が添加され、それが漏れ出ることがあるから

各種プラスチックには、製造の過程で有害な物質が添加されることがあり、それが油や酸、熱、日光などの影響で溶け出る・漏れ出る。その有害な物質が人間を含む生き物の健康にダメージを与える。

どのような有害な物質が含まれているかといえば、例えば

  • 内分泌かく乱物質(BPA・ビスフェノールA)
  • フタル酸エステル
  • 難燃剤(ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE)、リン酸エステルなど)
  • 抗菌剤(殺生物剤)
  • 重金属(鉛、カドミウム、水銀、ヒ素など)

プラスチックが、癌、アルツハイマー、生殖機能不全(不妊)、喘息などの原因になっている。

2.リサイクルが難しい物質だから

プラスチックは他の物質と比べてリサイクルが難しい。プラスチックの成分はまちまちなので、溶かして再度プラスチックとして利用することが簡単ではない。熱可塑性プラスチックはリサイクルで別の製品に作り変えることができるが、その品質は通常低下する。

日本はプラスチックの再利用率を84%と公称しているそうだが、実態はそのリサイクルのうち3分の2が焼却による熱利用なのだそうだ。

国際的にはリサイクルには分類されない焼却による熱利用を除けば、日本のプラスチックのリサイクル率は27%なのだそうだ。

一方で、資源ごみとして分別回収されていることが多いであろう他の物質、古紙やアルミ缶、スチール缶、ガラスは回収されれば、100%リサイクル可能なのだそうだ。他にステンレス、銅なども100%リサイクル可能だそうで、いわゆる「持続可能な社会」を望むならば、それらの100%リサイクル可能な物質を使うようにして、プラスチックは使用しないことが望ましい。

3.中に何が入っているかわからないから

各種プラスチックにどのような成分が含まれているのか、企業は完全には開示していない。だから、どのプラスチックにどんな危険な物質が含まれているかわからない。

なのでなおさら、プラスチックは危ない。

プラスチック問題は解決に長い時間がかかる、その理由は?

プラスチックが環境や人体や動植物に優しくないということが認知されても、このプラスチック問題の解決には相当時間がかかりそうである。そう思う理由は、

1.プラスチックに代わる便利な材料がない

プラスチックが使われているのは、便利で機能的で安価だからだ。軽いし、色々な形にできるし、さまざまな機能をもたせることができる。

アウトドアやスポーツ系の服はほぼプラスチック系(ポリウレタン、ポリエステルなど)である。綿や麻やウールやシルクで機能的な服を作るのは難しいだろう。

食品の包装やトレーもプラスチックだが代わりになるものがすぐには見つからなさそうである。パソコンのマウスも、キーボードもプラスチックである。コーヒーメーカーもたいていお湯を沸騰させる部分はプラスチックである。スニーカーもプラスチック材料のかたまり。

2.新素材バイオプラスチックはまだまだ未知数の状態

「バイオ由来または生分解性、あるいはその両方の性質を持つプラスチック」をバイオプラスチックと呼び、既存のプラスチックよりも環境への負荷が軽い素材として期待がされている。

要は、自然に優しい素材からできている、分解されて後に残らないプラスチックというイメージである。

しかし、仮にバイオプラスチック製品が「堆肥化可能」と謳っていたとしても、個人でできるのか、専門の施設でようやく堆肥化できるのかまちまちだったり、少量のバイオ由来のプラスチックに既存の化石燃料由来のプラスチックを混ぜ合わせて作っただけの、全くエコではないものも存在するようで、バイオプラスチックは、期待はされていても信頼できる統一化された規格の製品が出揃っていないようだ。

3.自然環境にばらまかれたプラスチックの回収(?)は大変だから

人口増や市場経済のグローバル化で、今後もプラスチックゴミがよりいっそう海に流出していくことが懸念されているが、仮にプラスチックゴミの流出が止まったとしても、既存のプラスチックゴミは各所に散らばっており、回収し浄化するのは大変な手間がかかる。

海の底に沈んだものに関しては、回収不可能ではないか。

4.プラスチックを代替する材料は高いから

プラスチック材料は環境に悪いから、自然素材のものやリサイクルがもっと容易なものを使うかとなると、商品のコストが上がる可能性が高い。合成繊維よりも、綿(特にオーガニックコットン)100%の衣類は高い。

風呂桶や風呂用椅子も、プラスチックをやめて木製にすると値段が上がる。プラスチックのコップよりも、ガラスやステンレスのコップは高い。

プラスチック問題に関して個人レベルで今すぐできそうな対策

個人レベルでプラスチック禍に対して何ができるのか?

なるべくプラスチック製品を買わない使わないポイ捨てしないということに尽きる。

例えば、買い物時の包装を簡易にしてもらう(レジ袋を貰わない)、ペットボトルの飲み物を買わない、木やガラスやステンレスの食器を使う、綿の服を買う、おもちゃもたいていはプラスチック製なので、買わない・貰わない、ストローも使わない、枕はそばがらの物を買う、容器がガラスの液体商品を選ぶ、プラスチックを含む製品を買う時はなるべく中古で買う・・・などなどだ。

プラスチックの代替素材として選べるものには、ガラス、陶器、ステンレス、鋳鉄、アルミニウム、銅、すず、チタン、綿、ウール、竹、麻、絹、本革、木、コルク、天然ゴム、植物繊維、動物の毛などが考えられる。

できることは多々あるけれども、100%プラスチックを使用しないで生活することは現状不可能である。プラスチック製しかない製品も多数ある。もっと社会全体が大きなレベルで変化しないとプラスチックの利用は減少できそうもない。

また、国家が違えば必要な対策も変わってくるだろう。例えば、日本は水道水が飲めるから、飲水に関してペットボトルの使用を拒否できるが、多くの国では水道水が飲めないので、ペットボトルの水を買ったり、プラスチック製のウォーターサーバーを家庭に置いている。こういった国では、何を使って水を保存・運搬するのかが課題となる。

今後、社会で起こるかもしれない変化

もしもプラスチックごみ問題に対する意識が高まっていけば、次のような変化が生まれるだろう。

1.スーパーで量り売りの食べ物が増える

現状、多くの食品がプラスチックで包装されて売られている。このプラスチック消費を減らすには、消費者の側が容器を持っていって、そこに買った食べ物を入れて帰るしかない。

食品を持ち帰るマイ容器と量り売り方式が出現するだろう。

2.ガラス容器の商品が増える

液体商品の多くがプラスチック容器に入れられて売られているが(洗剤、化粧品、調味料)、これらの入れ物がガラスになっていくかもしれない。ガラスならリサイクルが容易だからである。

3.自動販売機やコンビニからペットボトルが消える

リサイクルが容易な缶や瓶、紙パックの飲み物を飲めばいいのだから、ペットボトルの飲料が店頭や自販機から消えるかもしれない。

不便ではあっても、環境や健康の方が大切であることを思えば、そうなってもおかしくはない。

ともかくプラスチック問題は解決に長い時間がかかりそうである。プラスチックがあまりに便利で安価だったため、社会に深く浸透してしまった。脱プラスチックへは様々な努力が必要だ。