慈善団体に寄付する前に会計報告(収支計算書)を見るべし

我々は善意から、あるいは気まぐれから、ときには罪悪感から慈善団体に寄付をすることがある。

私も時々寄付をする。しかし最近は、その前にその団体の会計報告を見るようにしている。会計報告を見ると、その団体が本当に寄付を必要としているかどうかわかるからだ。

団体によっては、寄付金やら助成金やら補助金やらが使い切れないほど入っていて、大量のお金が繰り越されていたりする。

営利企業でもこれだけの利益を毎年計上するのは難しいと思えるほどの財産を毎年増やしているところもあるのだ。

慈善団体に寄付をする前にチェックするべき注目点

慈善団体(NPO法人など)のウェブサイトには、会計報告が掲載されている。これを見てから、寄付をするかどうか決めたほうが、あとあと後悔しないと思う。

収支報告を見る時のポイント

まずは企業の損益計算書に近い、収支報告を見るとよい。これを見ると、どこからどれだけ収入があって、その収入をどんなことに使っているのかがわかる。また、資金規模もわかる。

私は慈善団体の会計規則に詳しくないが、こうした収支報告は、「資金収支計算書」とか「活動計算書」とか「決算報告」と呼ばれている。名称は統一されていないのかもしれない。

こうした書類を見るときは、下記の事柄に注意するとよいと思う。

1.最終収支は黒字なのか、トントンなのか?

最終的な収支が大幅に黒字であるなら、その慈善団体は、寄付金等を貰いすぎ(?)ていて、その年度では使い切れていないことになる。

もしかしたら、大きな金額を使うプロジェクトがあって、そのために資金を貯めているのかもしれないが、ただ単に収入が多すぎるという可能性もある。

収支がトントンなのであれば、寄付金を活動に使い切っているということなので、資金使途が正常ならば寄付のしがいがある団体といえるだろう。

2.資金使途は変ではないか?

資金使途が変でないかどうかもチェックするべきだ。巨大な慈善団体だと、かなりの金額を広告費に使っていたりする。大金が広告費に回されるような団体になら、わざわざ寄付する必要はないだろう。

3.人件費、管理費用、常勤職員・役員への給料は多くないか?

世の中には、単に自分が儲けるために慈善団体(NPO法人など)を運営している輩もいるだろう。そうでないかどうかを見るために、その団体への給料(人件費)・役員報酬・退職金の積立などをチェックするべきだ。職員数がわかるなら、一人あたりの給料を計算し、多いか少ないかをチェックしてみるとよい。

管理費用は、毎年かかる費用である。事務所家賃、光熱費、外注費、交通費などで、慈善活動のために使ったのではなく、事務所の職員や役員のために使われた費用だ。管理費用が膨大にかかっている慈善団体に寄付をしても、あまり意味はないだろう。

貸借対照表を見る時のポイント

その団体の資産・負債などが記載されているのが、貸借対照表である。

貸借対照表を見て、多額の現金預金がある場合はあまり寄付する意味がないように思う(もしかしたら、何か大金を使う計画があって貯蓄しているのかもしれないが)。慈善活動がしたいなら、寄付金に頼らず、まずは手元のお金を使って行えばいいからだ。

意外とお金が余っている慈善団体は多い!?

多くのNPO法人などの慈善団体の会計報告を見てみると、意外とお金を余らせているところが多い。

せっかく寄付をするなら、そういう団体への寄付は避けて、お金が役に立ってくれる団体に寄付をしたほうがよいと思う。

実際にNPO法人の資金収支を見てみる

実際にNPO法人の資金収支を見てみたい。

特定非営利活動法人 抱樸(ほうぼく)。北九州で慈善活動をしている団体だ。

https://www.houboku.net/about/overview/

リンク先に会計報告が載っている。2019年度の収支をまとめると下記のようになる。用語はわかりやすいように少し変えてある。

最終収益は、収益合計(603,393)ー事業費用ー管理費用ー固定資産売却損(165万円)=5,910万円となっていて、まぁまぁの金額が繰り越されている。2020年度は1.37億円が最終黒字(繰越)となっていて、さらに多くの金額が繰り越されている。

収益のうち、不動産収入5,500万円は貧しい人に貸し付けた住宅の家賃だろうか?保険料収益1億はなんなのだろう。なかなかの資金規模の団体で、金銭的には困っているように見えない。

次は社会慈業委員会 ひとさじの会。台東区のお寺の人が運営して、炊き出しなどをしている団体だ。ここの令和2年度の決算報告は、会報によれば下図のようになっている。

収入ー支出で単年度で、359万円が余剰となって繰り越された。この団体も金銭的には困っていないと言えるだろう。

以上、お金(収入)が余剰となっているように見える団体の会計報告を紹介してみた。善意の寄付は否定しないが、どうせなら、お金が十分にない団体を探して寄付してみてはどうだろうか。