学ぶたびに、考えるたびに古今東西の聖賢が述べてきたことは正しいと思える。
つまり人間は、魂とか意識とか霊性と呼ばれるものを発達させるために生まれてきている。それがある一定の成長段階に至るまで、何度も我々は人間として生まれてくる(地球にとは限らないが)。苦しみや悲しみ、虚しさ、満たされなさは学びの原料のようなものなので、生きることには苦しみが付きものである。
できれば、この苦界から卒業したい。そのためにも霊性探求を生きている間に進めたいと思う。
先進国ではたくさんの有益な霊性探求の本を読むことができる。探せば、霊性探求の同士とも交流することができる。そういう意味では、現代は霊性探求者にとって非常に恵まれた時代である(地域によってはそのような機会を得ることが難しいので日本に生まれてこれたことは非常に幸運である)。
しかし、霊性探求の道を行くことは簡単ではない。なぜなら、
1.霊性発達には進捗をはかる定量的な尺度が無い
資産を増やすとか、スポーツの上達を目指すのであれば、金額であったりタイムや重量といった進歩の度合いをはかる定量的なデータがある。私達はそういった尺度をもとに自分がどの程度進んでいるのか知ることができ、それがより一層の発達の励みになる。
しかし霊性探求においては、これといった尺度のようなものがない。自分は今、どのような場所にいるのかさっぱりわからない。これが霊性探求者を戸惑わせる。
2.霊性探求の道には脳を喜ばせるような刺激が無い
我々の脳は、あるいは自我は、興奮・刺激が大好きである。成功のための必死の努力、スリル、ハラハラ・ドキドキ、達成感、あるいは失望、自己嫌悪、闘争、和解、大団円・・。
そうした感情の起伏が自我の栄養になっていて、我々の日常的な活動のガソリンともなっている。
しかし霊性探求の道にはそうしたハラハラ・ドキドキはない(たまにはあるが)。穏やかで地味な暮らしの継続こそが求められ、刺激を求める欲求をかわす必要がある。そうした穏やかな暮らしの継続は逆につらいのである。
例えるなら、スマホやPCのある暮らしになれた現代人が、電波の届かない田舎にいって暮らす際に感じるもどかしさのようなものだ。
3.頭で学べることには限りがある
聖賢、覚者、霊性探求者が書いた書物は、細部に違いはあれど、大筋は同じである。したがって、一定量の霊性に関する書物を読んでしまえば、頭で学習できることは学習済みとなってしまう。
あとは、体感で、ハートで、経験として分かるしかない。
受験勉強などであれば、長時間猛勉強し、先の先まで参考書を読んで、ハイスピードで学習をすすめることが可能だが、霊性探求はそのように早く進めることはできない。
ひたすら体験し、実行し、待つ必要がある。地味に時間が経過するのを耐えなければならない。
4.現世は霊性探求とは逆方向を向いている
僧侶や神父といった職業を選ばない限り、私達が生活の糧を得るための仕事は、通常、霊性探求とは無関係なものとなる。
仕事をまじめに行うためには、そうした利益追求の世界にある程度浸る必要があり、それが霊性探求にストップをかけるかもしれない。
また、霊性探求に重きを置いている人に出会うのはまれで、そのことも霊性探求を妨げるかもしれない。
5.人生が長すぎて、霊性探求の努力を後伸ばしにしたくなる
余命があと数年とわかれば、その時間を霊性探求のために捧げることができるかもしれないが、平均余命まで生きるとすれば、人生の残り時間はとても長いものとなる。
余命があと数十年ともなれば、霊性探求のための努力もダレてしまう。
以上のような理由から、霊性探求の道は簡単ではなく意思の力が必要となる。
霊性探求を妨げる、お手軽スピリチュアル、インチキスピリチュアルについて
前の方に、現代は、霊性探求に関する書物に容易にアクセスできる、いい時代であると書いたが、全てのスピリチュアル本が正しいとは限らない。
一部のスピリチュアル本は、却って読者を迷妄に導く内容になっている。また、一部の宗教団体に加入することは、却って霊性への道から遠ざかることになるとも思う。
我々の心では、霊性探求に関するどの本が正しくて、どの本が間違えているのか判断ができない。霊性探求の先達が話した内容のうち、どれが正しくて、どれが間違えているのかも判断できない。一つの書物や、一人の人物の発言によい内容と変な内容が混交していることもよくある。
なので霊性探求に関しては、古典と呼ばれる本を読むことが安全だと思われる。人物に関しては、世界の多くの人間から長く支持されている人物の発言を参考にするのが良いと思われる。
恐怖を煽るようなもの(予言、黙示録など)、あまりにも二元的なもの、現世利益の追求にとどまっているもの、社会規範から逸脱しているもの、真偽の確認ができないようなもの(遠い過去、宇宙人など)、簡略化しすぎているもの、大金を要求されるもの、やたらとメディア露出が多い人、政治にコミットしすぎている人などは避けるのが無難だ。また超能力があることと霊性の高さは必ずしもイコールでないことにも注意が必要だ。
口寄せとか、憑依、チャネリングによって書かれた本の中にも優れた書物は多くあると私は思うが、実際の人が書いたり語った本を参考にしたほうが無難であるとも思う。