コロナウイルス問題:中国と米国がセンチメントを変えるしかない

昨日は世界中で株価が大暴落してしまった。韓国で感染者数拡大、イタリアでも拡大が原因だと思われる。

イタリアでコロナウイルスによる死者が6人出ただけで、当該地方の集会の禁止、学校の閉鎖などの処置がとられた。(確認された感染者数は現時点で230人)。

しかし、本当にそこまでの処置を取る必要があるのだろうか?と毎度ながら疑問に思ってしまった。

他の原因による死者がそれなりに出ても無反応であるのに比べて、コロナウイルスによる死者が出た場合だけ大きな反応を強いられるのはおかしな話である。

参考記事:様々な要因による死者数の比較

また、藤原かずえさんが、中国の各省ごとのコロナウイルスによる死者をまとめて表にしていたが、その死者数の少なさに驚いてしまった。

人口2,400万人の上海市でたったの3人、日本が渡航制限をしている浙江省では1人(もちろんこのデータに載っていないコロナウイルスによる死者がいるのであろうが)である。

大前研一氏は、世界中でこれだけコロナウイルスに対する処置が大げさになったのは、中国が大げさな処置を始めたからだと指摘しているそうだ。以下、引用の引用になるが、メルマガで下記のように書いているらしい。

今回の新型コロナウイルスについて、これだけ世界中で騒ぎが大きくなってしまった一因には中国自身による過剰反応の影響があると思います。
中国が湖北省すべてを閉鎖するなど過剰に反応し過ぎたために、世界中もそれに応じて危険性を感じてしまいました。

中国の初動にミスがあったと私は感じます。

私も人命軽視国家の中国が、都市封鎖のような反応をしたことが諸外国の過剰反応を招いたと思う。中国が仰々しく反応したために、他の国も大きな恐怖感に囚われたのではないだろうか。

さらには米国による中国からの外国人の渡航制限である。

この2つによって、コロナウイルスに対する反応が、実際の死者数に比べてとんでもなく大きなものとなってしまった。もちろん各国が厳しい対応をしたから、現在の死者数で済んでいるのだが、もっと多数の死者を出す病気もあるのだから、ここまで厳しい措置を採る必要があったのか疑わしい。

ちなみにアメリカでは薬物の過剰摂取で2017年には7万人以上が死んだし、毎年約5万人がインフルエンザで死んでいるそうだ。

その他の国家の政治家にとっては、事態が悪化したときに責任を問われないようにするには、中国・米国の措置に追随するのが無難なので、右にならえで各国がコロナウイルスに対して厳しい措置をとるようになってしまった。

インドネシアやカンボジアのように、「コロナウイルスの感染者なんかいねぇ!」で済ませておいて、時間を稼いで治療法やワクチンが開発されるのを待っていれば、経済的なセンチメントがここまで悪化することはなかったであろうに、韓国やイタリアはいたずらに感染者数を確認したので、より恐怖感を煽る結果になったように思う。

コロナウイルスは風邪の一種なので、感染者数自体は増えていくに決まっている。なので感染者数を確認すること自体には、あまり意味はない。ほとんどの人は軽症で済むので、感染者数の増加に神経をとがらせてもしょうがない。

死者数に関しても、他の病気・事故との比較で、多いか少ないかを判断すべきで、コロナウイルスによる死者数だけを見れば、無意味な恐怖感にとらわれるのは必定である。

中国でさえ致死率2%、高齢者をのぞけば致死率1%未満の病気に対して、どこまで反応をするべきなのか?これといった合意はない。

しかし、現在の対応が明らかに行き過ぎで、経済的な負荷が大きすぎるなら、アメリカや中国が対応を変え、各国のセンチメントを変えていくしかない。

コロナウイルスによる死者を1000人減らすために行った措置が経済不況を招き、経済不況によって1000人以上自殺者が増えてしまったら、死者数の最小化という観点からすると本末転倒ということになってしまう。

参考記事:経済の危機は命を奪います:新型肺炎のリスク管理

命の値段が上がってしまった現在の民主主義社会で、一定の死者数を受容する決断を行うのは勇気がいることだが、現在の措置が明らかにバランスを欠いているなら、政治家は決断をすべきである。

幸い、中国は武漢の封鎖措置を一部解除していくそうだ。まずは中国が「やりすぎ」な対応があったら改め、各国を安心させるべきだ。そして米国などの西側諸国も、経済的な損失との見合いで落とし所を見出していくべきだ。その際、日本の折衷主義的な対応は参考になるだろう。

なぜ中国の対応が大げさになったのか?

人命軽視だったはずの中国が、なぜここまで厳しい措置を採るようになったのか?

そこには以下の理由があると思う。

  • 病院の数が少ないので感染者数が増えすぎると医療崩壊してしまうから。
  • 武漢市や湖北省のトップが更迭されたのをみて、他省のトップは厳し目の措置をとることが保身になると考えたから。
  • 中国政府自体が中国人を信じておらず、ひょっとしたらウイルス兵器が流出したのかも、と考えたから。
  • 中国には選挙はないので、政府が崩壊する時は、革命・内乱・指導層の殺害が伴う。過度に人民に嫌われるのはヤバいと習近平がびびったから。

トランプ大統領は日本に追随するのではないか

アメリカにも当然コロナウイルス感染者はそれなりにいるはずで、今後、どんどん見つかっていくはずである。その際に、中国やイタリアのように都市封鎖だとか、集会の禁止を行ってしまえば、本気の不況、株価下落を招いてしまう。

それは避けたいだろうから、トランプ大統領も日本式の決断をするのではないか?国民には感染防止のための行動を要請しつつ、重症者のみ感染しているかどうかの検査をする方式である。ただアメリカは誰もが手厚い医療サービスを受けられるわけではないので、アメリカでコロナウイルスが流行すれば、致死率は日本より高くなってしまうのが日本との違いだが。

結果として日本政府も厚生労働省もよくやっているのでは?

保守系の言論人が、政府や厚生労働省などを批判しているのが目につく。100点満点の対応をしているとは思えないが、私はよくやっている方だと思う。

限られた権限、経験、縄張りの中で対応がお粗末になることがあるのはしかたがない。誰が役人をやっていたとしてもそうなるだろう。

冷静にリスクを見極め、国民に感染防止の努力を要請をしつつ、時間を稼いで、治療法・防止法が確立されるのを待つ。政府の方針は大筋で間違っていないと思う。