コロナ禍を予言していた沖縄の精神病患者の話

沖縄で怪談を蒐集している小原猛氏が「琉球奇譚 マブイグミの呪文」という怪談集の中で面白い話を紹介している。「預言者」という話だ。

首里城の火災の翌週の話なので、2019年11月の話だ。

ある精神病院にAさんという患者がいた。元々、ユタ(沖縄の霊能者のようなもの)にかかっていたがよくならず、Aさんは家族に入院させられた。60代の男性だったそうだ。以下は、本文からの引用。

昨年(注:2019年)、伊佐川医師は、Aさんから一通のメモを手渡された。

そこにはこんなことが記してあった。

2019年7月 伊是名島のウンナー(豊作祈願の祭り)の綱引き、切れる。

2019年8月4日 与那原の大綱引きの縄が切れる。

2019年10月13日 那覇大綱引きの綱が切れる。

「先生、これね、覚えておいてください。私ね、よくトゥルバトー(ぼんやり)しているんだけどね、いろんなものが見えるわけですよ」とAさんは言った。

「何が見えるんですか」

「未来というか、いろんな線が絡んでいて、恐ろしいんです。声も聞こえるし、ウヤファーフジ(先祖)かもしれないし、悪魔かもしれないし、よくわからないんです」

「そうなんですか。で、この記録はなんですか。那覇大綱引きの縄が切れたのは新聞で読みましたよ。そのほかの2つは知りませんでした」

「先生、沖縄の綱引きは神事なんですよ。吉兆を占う神事なんだ。とても神聖なもので、最近はスポーツみたいに見られているが、違うんだ。これで昔の琉球王朝は世界の動向を占っていたんだ」

「そうでしょうねえ。歴史がありますからね」

「だから、これだけの綱が切れるっていうのは、何かあるんだよ、先生」

「何があるんです?もしかして首里城が燃えたことを意味しているんですか?」

先週の夜中、沖縄を象徴する巨大な城が炎に包まれていた。

ところがAさんはこんなことを言った。

「違う。まったく違うものが来る。もっと酷いものだよ。城が燃えたってどうということはない。だってあれは人間が作ったものだろ。先生だって知ってる。そうじゃない。もっとたくさん人が死ぬ。世界が終わる。それが始まる。私は怖いんだよ、先生。親戚とかみんな死ぬ。私の中で誰かが悲鳴を上げている。疫病が流行る気がしているんだよ。世界的な疫病だよ。人がいっぱい死ぬけど、誰かが裏で糸をひいている」

「誰かが世界を滅ぼそうとしているわけですか?」

「そうそう。もう、涙ビケイ(涙ばかり)。泣くしかない。悪魔がこの世とあの世をイチャイキチャイ(行ったり来たり)。ウトゥルシムン(恐ろしい)」

それから2週間後、親戚の葬式で外出の機会を与えられたAさんは自死してしまう。という話だ。

この話で興味深いのは、「世界が終わる。それが始まる」という部分か。

コロナ禍とワクチン禍で、「誰かが裏で糸を引いている」災厄は終わるのか?それともまだ続きがあるのだろうか?

ワクチン禍にしても、ワクチンの悪影響が出きったわけではない。中長期的な影響がはっきりするには5年から10年はかかるだろう・・・。

なんにせよ、小原猛氏の怪談は内容も面白いし、筆力も高く、おすすめだ。アマゾンプライムに入っている人はkindle unlimttedで無料で読めるので是非。

関連記事:おすすめの怪談作家を紹介します

関連記事:当たった予言の見事な振る舞い